旬の観たいもの展2010 公演情報 旬の観たいもの展「旬の観たいもの展2010」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    天然果実「Water-Cooler」を観た
    「ゲームの名は獣奇的殺人!」そんなタイトルが似合うかのような、ゲーム性の強い、アニメ感覚の世界観。暗転する際の音響の導入、照明、6人の高校生の薄暗がりでの佇まい。それはもう、映画の中のワンシーンのよう。

    ほの暗い闇の世界から浮かび上がってくるような斬新な場面だ。閉じ込められた世界、身に覚えのない異次元の世界から彼女らの物語は始まる。

    ワタクシのこりっち投稿「観てきた!」の数、1102舞台の中でも極めて経験のない描写だ。その映し方は演劇というより目の前で起こっている高校生らのゲームさながら。作家・広瀬格は勿論の事、津島わかなの演出の見事さに唸る。たぶん、この舞台を観た誰もが今まで経験したことのない描写に驚くと思う。

    座席は最前列の桟敷席に座ると女子高校生の・・・、とても美味しい。笑


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    序盤、6人の女子高校生が銃、斧、ナイフ、ロープ、カッター、ペットボトルを持ってちょっとガニマタで佇む。この演出に最初からやられる。この物語はもしかして「殺人ゲーム」なんじゃないかと。6人はそれぞれ自分が何故ここに閉じ込められて凶器なんか持っているのかが、さっぱり解らない。しかし、記憶を辿っていくと、10年前に学校であった獣奇殺人の情景を思い出す。

    この6人の中に誰かによって殺された被害者と殺人鬼が居ることを漠然と理解すると、6人はお互いに疑心暗鬼になって殺し合いの模様を描き出す。いったい誰に誰が何で殺されたのか?凶器、殺人鬼、被害者で216通りのシーンがある。これは中学生の問題だ。6の3乗。

    そして殺されるかも知れない恐怖に打ち勝つことが出来ない6人はヤラレル前に殺してしまう者、己の精神の限界についつい銃で撃ってしまう者。狂気の寸前で殺し合いの様になるが、殺された者が倒れるシーンの演出はまさにゲームのように静かにゆっくりと落ちてゆく。そして数秒後、また復活するのだ。まさにゲーム。

    だから一般的なエンゲキという視点で観てはいけない。これはただの殺し合いというゲームではなく、犯人捜しのサスペンスの中に、仲間が先生によって殺された事を知ると、それに対峙して生徒が手に武器を持って戦うというホラー性もあり、更に殺人者と被害者が繰り返し反転することで観客もいったい犯人は誰か?などとドキドキしながらのめり込み、いつしか自分も物語の中に入ってしまうという高度なトリックも存在する。

    正解を見つけないとここから出られない恐怖。ザアーザアー・・と止まない雨の音の演出。舞台ではブレイクダンスのようなゾンビダンスも盛り込み、連続猟奇殺人の犯人に仕立て上げられたプールの死体の謎と中原の呪い。喉が渇くというおぞましい罰から5人の同級生を殺してその血を啜るという吸血鬼のように変化した1人の生徒の終盤の展開と教師との対峙は想像だにしなかった結果で、その風景も新しく斬新だった。

    この舞台に関わった彼らにとてつもない才能を感じて、演劇界の新しい夜明けを観ているかのようだった。素晴らしい。



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    2010/08/27 11:56

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  • かく>
    コメントサンクス。

    天然果実、実に素晴らしいです。こりっちに劇団として個別に登録しておいた方が何かといいような気がしますが、機会がありましたら、制作さんか主宰さんに助言してあげてくださいね。

    音のプランも場面転換のムーブメントも実に素晴らしく、まさに芸術作品でした。演出津島さんとお会いしたときに、「えっ!?この子が?!これを??」と物凄くびっくりし、また前説に「演出をさせて頂いた津島です」という挨拶も良かった。意外に演出家や主宰の挨拶って小劇団では少ないので、この作品を演出したのは「この人」と解りますと、舞台に対して親近感というか、舞台感性を覗いたようでごくごく身近に感じられるのですよ。

    初演は観てなかったのですが、リアリズムでできていたのですね。むしろ初演を観てなかったのが良かったのかもしれません。今回は舞台での居住まいに特に感動しました。更に暗転する度の音響導入、雨の音、暗転・・・物語が動くたびに、いちいち細かい音響のシャワーを浴びせられて、こんなにも舞台が音によって反響させられるのだという事を今更ながらに感じました。

    振付金崎さんとの3人のタッグは、舞台の裏側で見えないリングに乗って勝負に挑む勇姿を想像して、なんだか嬉しく思います。次回もまた、舞台と同時に進行しながら挑戦する勇姿らを見たいものです。

    2010/08/29 11:46

    ありがとうございました。天然果実にドラマトゥルクの肩書で参加しております角本です。

    客入れからの全ての音のプランについて責任を持つ立場です。また演者の身体をみる稽古をなんどかやって場面転換のムーブメントについてのアイディアを演出に提案したりしています。

    そんなに遠くない昔にご自身の劇団で初演されたらしい戯曲をお借りしてきての公演ですが、私は作家氏ご本人にお会いしたこともなく、初演をみたこともない。どうすればいいかかなり悩みました。が、演出津島がどちらかといえばリアリズムでできていた初演をいっさい無視して女の子のパワーをみせたいということで、このような形になりました。演出が言葉の語り方、舞台での居住まいについて構想したことに私が音楽を足すなどの助言をしさらに振付金崎がよりダンス色の強い場面を構成する、さらに3人が出してきたことをお互いにフィードバックしていく、そういった共同演出の形で、私たちの世界をつくろうとしています。みささんが、高い評価を下してくださったこと感謝いたします。

    この共同演出形式はまだまだ進化を遂げられると思っております。是非また劇場でお会いしたいものです。

    2010/08/29 01:26

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