UFOcm 公演情報 あひるなんちゃら「UFOcm」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    なんちゃら〜としては、ストライ〜ク!
    何にもない。
    ぼんやりしている。

    でも、なんちゃらだから面白い。

    ネタバレBOX

    ちょっとだけ真面目な話をしよう。

    私はそれほど昔からのファンではないのだが、ここ数回観て思うのは、彼らは「コメディをやっているわけではない」ということなのだ。
    「結果として笑いが起きる」のだが、コメディではない…と思う。

    コメディとして見ても「ゆるい」という視点から、それなりに楽しめることは確かであるが。

    しかし、強いて言えば、この劇団のやっていることは、「不条理劇」が一番近いのではないだろうか。ご存じの通り、「不条理劇」というのは、意外と笑いが起きたりする。それをもっと笑いの方向に煮詰めていったり、いかなかったりすると、あひるなんちゃらの感じになると思うのだ。

    ちょいちょい挟まれるメタな感じも。

    コメディとしては、その基盤となる人物像が、あまりにも歪だったりする。思い切って言うと、軽いノイローゼな人たちしか出てこないのではないかと思うほどだ。

    今回で言えば、友人を意味なく拒絶する女性だったり、豚肉を腹一杯食べたいがためにUFOを呼ぶ女性、さらに何でだかわからないが、毎日草野球をしている男、面白そうだったら(非番の日が前提だが)、悪事的なことをしてもいいと思っている警官など、明らかに歪で異様である。彼らの応対はさらに変である。
    不気味とも言うかもしれない。
    当然それはわざとそうしている…はず。

    「そんな変な人いないよ」と言う人もいるだろうが、作・演をしている関村さんだって、そんなことぐらいわかっているはずだ。
    もちろん、劇団の全員もわかっているはず。

    そんな世界がいつもここにはある。
    現実にありそうな状況もしくは設定の中で、思わぬ人間的な反応から笑いを誘うような、コメディとは明らかに立脚点が異なるのだ。
    そんな世界を前提に物語が構築されている。

    あひるなんちゃらを観ていつも感じるのは、「コミュニケーションを取りたい人たちの必死さ」である。
    ウソやデタラメを言ったとしても、コミュニケーションをとっていたいという姿、痛々しいほどの姿がいつも見られる。
    とんでもないことを言って、次の会話につなげていくことでの、不安の解消とでも言うか。

    今回で言えば、小学校だけ行っていない女性とその友人の会話なんて、まさにそれである。「友人(メル友)」という言葉の周辺を、着地点を互いに知りつつも、いつまでも周回しているのだ。

    「笑い」というお砂糖の中に、言いたいことが隠れている(いや、隠してはないか)。観客はお砂糖舐めて「甘い」と言いながらも、その中にある「変な味」に気がついたり、つかなかったりする。隠し味のように、その「変な味」に気がつかなくても、ひと味足されることで、深みが増しているのだ。
    ただし、その「変な味」を「不快」に思う人も当然いるだろう。理解できない変な味だからである。それは、麦茶かと思って飲んだら麺つゆだったような不快感ではないだろうか。コメディかと思っていたのに、である。

    毎回、当て書きであろう役者もいい。繰り返し客演している役者はその空気を確実に自分のものとしているように思えた。そして、ボー立ちと言えるような佇まいは、不条理である。

    あひるなんちゃらの役者は、その足腰が強いような気がする。その存在感は、ホームであってもアウェイであっても際立つ。

    JACROW『北と東の狭間』で中国人パブに通うポケベル社長を演じた根津茂尚さんは、独特のダークさを出していて、さらにラストでの表情への振り幅が素晴らしかった。今回、毎日草野球をしている男とは、ある意味紙一重の存在感であったと言える。不気味さ無邪気さの狭間を漂う野球男(背番号16)。JACROWは、その本質を見抜いてのキャスティングだったのだろう。

    ミクニヤナイハラプロジェクト『幸福オンザ道路』でキャスティングされていた黒岩三佳さん。ミクニヤナイハラプロジェクトはご存じのとおり、怒濤の展開に、激しい動き+高速の台詞である。どう考えてもあひるなんちゃらとは違いすぎる気がする。しかし、黒岩さんの凄い瞬発力&テクニックを買ってのキャスティングだったのだと思う。
    今回で言えば、UFOを呼ぶ女性に「泊めてもらってもいい?」と聞いて「……いいよ」と答えるのに対しての、黒岩さんの「いいのかよ」の鋭い台詞は、その速度としても音量にしてもあまりにも凄すぎて、感心しながら笑ってしまった。

    また、役者としての関村さん……は、アノ、あれはよかったですね、そうそう『あまうめ』…は出てはないか。まあ、ここでは横に置いておこう。

    とにかく、この2人の外部出演を見ても、ただ者ではないことが理解できるのではないだろうか。
    とにかく凄まじいのだが、あまりにもあっさり演じているのでわかりにくいのかもしれない。
    でも、それが目的ではないのでそれはそれでいいと思う。

    劇団の紹介で「微妙にズレていく会話の行き着く先には結局何もなかったりする」ときちんと言い切っているように、結局たいして何もなく、言ったことを投げっぱなしにしてみたり(そんなトラップ的なことがいろいろ散りばめられていて)、なんていうところも好ましいと感じてしまう。

    結局、あひるなんちゃらは、私にとっては確実に面白く、確実に楽しませてくれる。
    幕が開く直前ぐらいから、うす〜く流れる、テーマソングに耳をそばだてるあたりから顔はゆるみ、最後までゆるみっばなしである。
    笑っちゃうのである。

    あの衝撃のラスト、100年後の盆踊りは最高だった!

    だらだらと「あひるなんちゃらはコメディじゃないんじゃないか説」みたいなものを書いてきたが、あひるなんちゃらの公式ステートメントとして「われわれはコメディ劇団である」と宣言したとしても、私は「アウト!」とだけ言って、責任をとるつもりは毛頭ないとだけ付け加えておく(笑)。

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    2010/08/27 06:55

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