ファジー「ours」 公演情報 TeXi’s「ファジー「ours」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第一印象は何を伝えたいのか といったテーマや世界観の暈け 解り難さが手強い。かと言って見巧者向けとも違うような。自分の感性が問われるような感じがする。なお トリガーアラートは、それほど気にならなかった。

    説明では、男女二元論が生み出している「加害性」について考える1年間のプロジェクトで、リクリエーションを重ねながら三つの上演作品を発表する。本「OURS」は その二作目、女性(役者は全員女優)も背負っている加害性を表面化し加害性を生み出している社会構造を描くとある。にもかかわらず、劇中で「僕は」「俺は」等 性別に関係なく自分を表していると説明。男女は対立する存在なのか、それを意識させるものが分からないため、肝心の加害性が浮き彫りにならない。現代的に言えばジェンダー論を紐解く内容だろうか。

    受付でネタバレに係る紙が用意されているが、読むのは 観劇前でも後でも関係ないように思える。それは 物語をどのように観せ伝えるかに苦慮した末のヒントのようなもの。二つのレイヤーを錯綜させ、物語を敢えて曖昧にさせているように思えた。つまり登場する人物に担わせた役割ー個性の ぶつかり合い と 何をしているのかといった作業を見せている。その二つのレイヤーは、スクラップ&ビルドといったことを連想させる。

    何より 戸惑うのが舞台美術。タイトルにあるファジーという浮遊感あるものだが、同時に<死>といった重みを感じる。劇団の特徴として、異なる視点を持つ人間同士の対立や堂々巡りのフラストレーションをうず高く積み上げることで、ストレスフルだが、ワンダフルな作品を生み出すとあるが…う~ん。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、白く塗った平板で大きさが異なる立方体を作り それを4つ置く。周りの壁もオフホワイトで、そこにカラフルな紗幕のような飾り。天井にはミラーボール、ふわふわボールの束、床には おもちゃ や衣装掛け等 雑多であるが、全体的に浮遊感ある空間を演出している。かと思えば、幾本かのコーンバー、上演前から工事現場を思わす破砕音。登場するのは5人、デザインは違うが全員が黒色彩の衣装・靴で統一している。壁際の演技を見ていると鯨幕(死)を連想してしまう。人物の背景・関係性や場所等の設定や世界観を敢えて明確にしていない。それによって 誰もが持つ「加害性」を一般化して描こうとしているようだ。客席はL字型。

    複数レイヤーの表現、その同時進行的に発する台詞は、物語の多面性の表れか。舞台は 集中してどう観せるかが重要だが、 現実には、同時多発的に物事は進行している。受付時に貰ったネタバレには、登場する人物が担った役割が記されている。しかし それを意識して観ても 物語の展開や世界観は、容易には理解できないのでは?担わされた役割は、「わかりにくさ」「怒り」「曖昧さ」「苛立ち」「無邪気」ということらしいが…。

    終盤になって、音響等も含め「家の解体」の作業、そこの作業員の様子といったことが おぼろげながら分かってくる。立方体は部屋を表し、平板の留め具を外し 解体していく。そう言えば劇中で「休憩にしますか」といった言葉があり、役者が素に戻ったような雰囲気がある。そして家を思わせる家族の諸々の光景ー食事場面等 伏線が鏤められていたことに気付く。それでも宇宙云々といった台詞が飛び出し、混乱・混沌とした世界を持ち込む手ごわさ。

    家の解体は 家族の崩壊、もっと言えば自分自身も壊れ 感情のコントロールが出来なくなっていることを表している。深読みすれば 5人に担わせた役割は、実は1人の人間が持っている多面的なこと。そして追い詰められた心は現実逃避するかのように空想の世界へ、それが宇宙の話に繋がるのでは と勝手に解釈。
    ラストシーン、逆さにした椅子の脚の中にクマのぬいぐるみが閉じ込められている。それは自分(心)を自縄自縛していること、同時に社会の閉塞感と不寛容さを表しているかのよう。それでも家の解体に待ったをかけることで、救いと希望(再生・再構築)が…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/08/23 17:56

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