『まばたき』 公演情報 ポムカンパニー「『まばたき』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    毎秒間を丁寧に綴る
    『旬の観たいもの展2010』参加作品。
    時間軸を交差させたり反復させたりしながら物語を紡いでいく演劇というのを近頃よく目にしますが、この作品はそういった手法をとる作品群のなかでも見せ方が極めて独特です。
    ひとが『まばたき』をする一瞬にみるもの・みたこと、はもちろんのこと、他者・自己の心理的距離感の確定・不確定の可能性を、両側面からスケッチしていくシュレディンガーの猫のような構造で、正しい答えを求めようとすると、煙に巻かれてしまうような感覚に陥り、なんだか釈然としないのです(もちろん良い意味で)。
    一部、突拍子のない箇所もありますが、時の魔法にかけられたロマンティシズムだとおもえばさほど問題はないでしょう。

    ネタバレBOX

    ある時、ある喫茶店に偶然居合わせた3組のカップルが同時間軸のなかで、
    その時・その瞬間にみる・みた光景をそれぞれの視点軸から反復させながら、リアルタイムに進行していく(であろう)会話を少しづつ積み重ねて行く構成。

    まずはしがない劇作家・リョウの彼女、ユリが、「この喫茶店のなかで物語を書くとしたらどんな物語になる?」とリョウに質問をしたことをきっかけに、
    視界に入った本を読む若い女の素性から、誰を待っているのか、相手は男か女か、など散々勝手に推測し、時間を切り裂くようにダンサンブルな音楽が流れ出すとその音楽にあわせて登場人物たちが暗転の中テーブルの周りをキビキビと動く。
    音楽が鳴りやむと、今度はリョウ&ユリが噂話をしていた女・トモミのシーン(場合)がはじまる。噂をしていた通り来たのは男。彼氏であるらしい。名前はヒカル。

    トモミ&ヒカルはどんな関係性で、どんな話をしているのか、ユリとリョウは更に聞き耳をたてて推測していく。
    その間、二組のカップルの時間と動作が交互に停止したり、かとおもえば、直接関係性のない二組のカップルが同じタイミングでコーヒーをすすっていたりして、そういう所作をみているのがとてもたのしいし、なんだかとてもお洒落でここちよい。

    物語はこんな風にして、はじまりから終わりまで三角形の軌道軸に配置された、座席順をチェンジして、時計を右回り左回り、いそがしく回転する。

    3組のカップルが話していることは、びっくりするくらい普通でとてもありふれていることだけれど、口ではイエスでも、心はノーだったりもする。
    その相反する感情を、具象化して2つの可能・不可能性として提示する。
    どちらが本当なのかはわからない。
    当人でさえ、『私が私に距離感』を感じているからだ。
    その距離感はまばたきをすればする程ズレていくという。
    それも『私』の手に届に届く数十センチ離れた場所に。
    そして私とのズレを感じた私はやがて『あなた』とのズレも感じる。

    はじまりから終わりまで時間を反復させることはなるほど、
    このような関係性のズレを表現するための補佐でもあったわけだ。
    これには思わず唸った。

    そして気持ちのズレを重ねる台詞。
    すごく美しかった。

    が、3組目に登場したカップル、兄と妹との近親相姦は、
    こんなに危険な関係性でなくても充分に描ける主題だったのではないかと感じたので、
    このようにする必然性があったのか、疑問だった。
    そして妹のストーカーだと名乗る血まみれ男子。
    彼、ただ人を刺すためだけにいるような存在だったし。
    狙っているコミカルさもズル滑りって感じでなんだかかわいそうだった。

    ネタバレ外に書いた『突拍子もない箇所』というのは、兄と妹のラストの描写。
    死んで終わりにする、っていうのはちょっとありきたりで。もう少し工夫がほしい、そんなおもいがつのりました。

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    2010/08/25 23:34

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