実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/08/11 (日) 14:00
座席1階
マンションのごみ出しをめぐって、事態はあらぬ方向に転がっていく。悪い夢を見ているようであり、ひょっとしたらあるかもしれないと思ったりもする。要所できっちり笑わせるせりふや演出もすごい。
日常生活を描きながら、いつのまにか想像もつかない世界に迷い込んでいくという物語は小劇場には珍しくない。しかし、今作がすごかったのは、ごみ出しに来たマンションの住人が全員女性であったことだ。女性たちの井戸端会議では、「それは変だ」と思っても否定しなかったり迎合したりすることがよくあるのではないか。初対面も含めたメンバーの会話の中で、女性によくある(といってもよいと思うが)相手を傷つけないようにする配慮、思いやり、言いたいことを引っ込めてしまう空気がこの舞台のメーンテーマだと思う。もし、男性の住人役がいたら、ここまでの恐怖や面白さは実現しなかっただろう。
もう一つ、この舞台が強烈に面白かったのは、ごみ出しのルール違反を監視するおばさん役を務めた川上友里の怪演だ。彼女の熱演、いや、声を枯らしての怪演が笑いを生み、恐怖に巻き込み、客席は舞台から目が離せなくなる。
どうして「歩かなくても棒に当たる」というタイトルなのかは不明だが、マンションのゴミ置き場を阿鼻叫喚の場に変えてしまう台本は相当なものだ。クドカンが「アンパサンドはすごい」と言ったそうだが、この舞台を見た私も100%同意する。