実演鑑賞
満足度★★★★
今回もまた日常に生じた小さな嘘と正義、気遣いと気休めによってとんでもねえ事態が招かれ、さらに招かざる客(?!)までが招かれ、やがてとんでもねえ大事態になっていく可笑しみのトリプルアクセルを堪能。
ゴミ出しに間に合うか合わないかの話が、まさかこんな風に展開するなど誰が予想できるのか!笑いだけでなく劇構造の細部にも劇作家・安藤奎さんならではの美学が宿っている様に感じました。俳優の個性を最大に引き出す技術、予想を上回る魅力でそれに応えるキャスト陣も素晴らしく。
(麗しの!)川上友里さんのチャームと狂気が圧巻、堪能!
西出結さんの巻き込まれっぷりと悲哀も、安藤輪子さんのはみ出た真面目さも、永井若葉さんの協調と見せかけた適当さも、鄭亜美さんの番狂せな妖しさと艶も、配分・配置が絶妙で、どことどこをどう掛け合わせたら何がボムするかの見通しが全てクリーンヒットを成していて美しいほどでした。
小気味良く起きる笑いの奥に、荒唐無稽な世界の裏に、ノリや勢いでは成立しないある種の潔癖さを感じて、私はそこに芸術における秀逸さを感じたりもしました。が、今回もまたそこにさらに、お家芸とも言えるどアナログな装置が仕掛けられ新磁場が爆誕。もう呆気に取られ笑うしかない、痛快でした!
実演鑑賞
満足度★★★★
追加席販売でどうにかチケットにあり付けた。
3度目のアンパサンド。前に受付で買った過去作も読んで都合4作品を賞味したが、独自の世界観はまだこの先の行方を探して意外な展開の余地のある佇まいである。
ナカゴーorほりぶん(故鎌田順也作演のユニット)のエッセンスを(期せずして?)継承する作り手かも・・と前に書いた事があったが、作者安藤奎が演劇人を目指して上京後あれこれ模索の途上で、実はナカゴー公演に関わったようである(げに納得である)。
アンパサンドの劇では終末へ向かう阿鼻叫喚の時間が用意されているが、ほりぶんが正にヘトヘトになるまで感情と汗を絞り出す時間があり、それを延々とやる(観客も呼吸困難になる)展開を味わう。その中核メンバーの川上友里が今作には招かれ、一対多の構図で彼女が暴れ役である。
ほりぶんとの違いは、ほりぶんでは登場人物全員に熱があるのに対し、今作は特にそうであったが他の人物がナチュラル。後部席からでは放出する熱量をもう少し上げてほしかった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
初見前作の衝撃とはまた違う衝撃。意味のあるナンセンスとでも言おうか。
この時期によく見かける話ではあるが、前半のゆったりとした不思議な空気感から一転、後半のいい意味でのくだらなさの対比が実に楽しかった。
天才性を感じる90分だった。
実演鑑賞
満足度★★★★
女ジャック・ニコルソン、川上友里さんは三好栄子っぽい。この人はヤバイな。もう作家性がどうのこうの全て吹っ飛んでしまった。『めちゃイケ」以前の江頭2:50を投入してしまった感じ。作品はもう全部乗っ取られた。観客は唖然として見守るのみ。「ハ〜~~~イ。」
『悪魔のしたたり』(1974年)というカルト映画がある。サルドゥという見世物小屋のオーナーがさらってきた人々を延々拷問して殺す話。世間的には黙殺されたがその筋の人には好評で監督のジョエル・M・リードはカリスマ的な敬愛を集めた。だが後年インタビューに答えた監督によると、サルドゥ役の俳優に映画を乗っ取られてしまいあんな作品になってしまったそうだ。「自分にこんな趣味はない。こんな映画を撮るつもりはなかった。」
やっぱり山内ケンジ氏っぽさを何となく感じた。下らない細かいところと真剣に向き合い、そのディティールにこそとことん拘る笑い。強迫神経症的。
シアタートップスは相変わらず冷房の効きが悪い。ステージ上も汗だくで客席もキツかった。ケチってんのか?
マンションの共用のゴミ置き場。普通この規模だと管理人を雇うのだが団地のように住民の自主管理に任せている。
新しく引っ越して来た西出結さん、8時50分位にゴミを出しに来たが収集車はもう行ってしまったっぽい。
下の階の永井若葉さんも冷蔵庫の電源が落ちてしまい腐った生ゴミを出しに来る。
(主催・脚本・演出も兼ねている)安藤奎(けい)さんもゴミを出しに来る。
3人はまだ収集車は来ていないと踏んでゴミを置いて行こうとするのだが・・・。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/08/11 (日) 14:00
座席1階
マンションのごみ出しをめぐって、事態はあらぬ方向に転がっていく。悪い夢を見ているようであり、ひょっとしたらあるかもしれないと思ったりもする。要所できっちり笑わせるせりふや演出もすごい。
日常生活を描きながら、いつのまにか想像もつかない世界に迷い込んでいくという物語は小劇場には珍しくない。しかし、今作がすごかったのは、ごみ出しに来たマンションの住人が全員女性であったことだ。女性たちの井戸端会議では、「それは変だ」と思っても否定しなかったり迎合したりすることがよくあるのではないか。初対面も含めたメンバーの会話の中で、女性によくある(といってもよいと思うが)相手を傷つけないようにする配慮、思いやり、言いたいことを引っ込めてしまう空気がこの舞台のメーンテーマだと思う。もし、男性の住人役がいたら、ここまでの恐怖や面白さは実現しなかっただろう。
もう一つ、この舞台が強烈に面白かったのは、ごみ出しのルール違反を監視するおばさん役を務めた川上友里の怪演だ。彼女の熱演、いや、声を枯らしての怪演が笑いを生み、恐怖に巻き込み、客席は舞台から目が離せなくなる。
どうして「歩かなくても棒に当たる」というタイトルなのかは不明だが、マンションのゴミ置き場を阿鼻叫喚の場に変えてしまう台本は相当なものだ。クドカンが「アンパサンドはすごい」と言ったそうだが、この舞台を見た私も100%同意する。