エンドゲーム 公演情報 ルサンチカ「エンドゲーム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「幽閉者たちの悲喜劇」

     1957年に初演された本作はサミュエル・ベケットによる二作目の戯曲である。

    ネタバレBOX


     アトリエ春風舎の急ならせん階段を降りた先にある劇場内に入ると、舞台中央に白いシーツがかぶさった状態で安楽椅子に寝たままの人物が鎮座している。開演前の客席にはうっすらと雑音が響き、天井に設置された蛍光灯が白、緑、紫、青と移り変わっていって、酷暑の汗がすっと引いていくかのような心地がした。

     奥から足を引きずりながら脚立を伴い現れたクロヴ(伊藤拓)は、上下の天井から垂れ下がっているカーテンの上方を開き、四角い穴からこちらを覗き込んで短く笑う。そうこうしているうちに安楽椅子に寝座っていたハム(川本三吉)が起きる。彼は目と両足が不自由で立ち上がることができない。二人の会話にはエコーがかかっていて、まるで二人とも半地下で幽閉されているかのように見える。上演会場に合わせたのであろう独自の設定がまず面白い。

     やがて舞台奥のドラム缶に入っているナッグ(瀧腰教寛)が顔を出し、「お粥くれよ!」とせがむがハムがいさめ、ハムの命によってクロヴがなんと犬用のビスケットを与え、さんざんに喚き散らすところを上から蓋をされてしまう。ハムの会話から察するにナッグはなんらかやらかして下半身を失ったようである。もうひとつのドラム缶に入っているネル(赤刎千久子)とはいい仲のようで、かつての甘い日々を回想している。どうやらふたりともあまり体調がすぐれないようだ。

     ドラム缶に入ったままの二人を背景にしてクロヴとハムの対話は続いていく。犬を所望したハムにクロヴは一足が欠けたぬいぐるみをかしずかせる。外の天気が知りたいハムにクロヴは穴から望遠鏡を使って様子を見るが、そんなことはしなくていいと咎められる。蚤取粉をかけたり、ドラム缶に入っているナッグとネルの様子を見に行かせたり……静止しているかのように感じられる空間と時間のなか展開する他愛のないやり取りに、観客はそれぞれ思い思いを重ねることとなる。

     『ゴドーを待ちながら』でひたすら待ち続けているウラジーミルとエストラゴンと異なり、クロヴはここから出ていこうとするが出ていかない。脚が不自由なクロヴは暴君のようにこき使うハムに悪態をつくものの、言うことを聞いて甲斐甲斐しく世話をしている。ふたりの支配と共依存の関係は現代にも通じる普遍性がある。職場や家族、恋人や友人、はたまた国際情勢にまで当てはめることは可能だろう。

     二人ともやや声が大きすぎるきらいがあった点は気になったが、この噛み合わない対話が面白いため川本三吉演じるハムによる数回の独白があまり盛り上がらなかったのは残念である。しかし終盤でこれまでの人生を回顧しながら救いについて問う独白は見ごたえがあった。

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    2024/07/24 18:59

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