『口車ダブルス』 公演情報 劇団フルタ丸「『口車ダブルス』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    フルタ丸初観劇。「うまいな~」と幾度となく感心しながら観た。下北沢B1は馴染みのある劇場だが、舞台をゆったりと贅沢に使ってる感覚が新鮮。未知数であった「講談」要素がどう絡んでいるのか・・そこにやはり関心が向かうが、開場時間の間流れる女性講談の音源がアウトし、開演となると、見台を高くした台上に何と女性二人が座り、講談調の語りが始まる。さて・・・
    もっとも自分は講談を「落語」を通してしか知らない。(神田伯山氏の動画を初めて目にしたのは割と最近。)枝雀の秀逸なくしゃみ芸が聴ける「くしゃみ講釈」や、志の輔の全編講談調の新作を今思い出すが、(伯山氏のを聴いて実感した所の)講談の真骨頂である「クライマックス」のテンションであったりが、今回の作品にも盛り込まれ、また時折高座に出てくるフレーズをうまく嵌め込んだりと、単に「語り手(講談師)の進行による劇」止まらない趣向の充実がある。
    ストーリー的には舞台となる保険屋の営業部員それぞれの人生模様が切り取られ、各人の人生の分岐点を華麗に(見た目的にはバタ臭くとも)経て行く物語が講談的に綴られる。
    正直、出だしは打ち込みの音楽が「和」と合わないな、とか、可動式「見台」台の二人が人に隠れて見えないといった「不便さ」や多少多めな「甘噛み」など物理的要素に引っ掛かっていたのだが、仕込んだ伏線がやがて花開く考えられた台本に、「なるほど」「うまい」と心で呟くのであった。

    ネタバレBOX

    営業部員たちは男性3名、女性4名。新人女性、枕営業疑惑の女性、やり手の女性ベテラン、そしてじつは落語家を目指していて断念し、「同じ喋くりで身を立てる」仕事として選んだものの・・という女性が居る。これが後半驚くべき変化を見せる。男性にもベテランが一名、彼は音楽のプロを目指していたがバンドを去った過去を持ち、後半思い掛けない展開がある。高学歴で社会的地位の高い学友たちをターゲットに成績を上げているが頭打ちが見えている若手or中堅、もう一人が具体的に思い出せないが、各々が持つ特性に即した物語が書き込まれ、フォーカスされる。このエピソードの配置、ディテイルが「うまいな〜」なのである。
    もちろん個人史に深く分け入れば、もっと泥臭くみっともなく、従って行動に至らない事が多くその方が賢明である事の方が多い。が、皆が皆「等しく」課題や傷を抱え、乗り越えようとする群像劇とは「等しい」という点にポイントがある事に気付かされる。一名部外者が混入、彼には「革命」を担わせ、あるいは社内恋愛要素もあって混沌とするが、うまく触媒の機能を果たす。
    講談師は俯瞰で物語る存在だが、二人は営業部長を兼ね、部下たちの内面を含めた実情を鋭く見抜いている風なまなざしがある。これが作品のドラマツルギーを決定づけている感があり、そこに何かを感じているのだが、これに関してはお時間となったゆえ、またの書き継ぎにて。

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    2024/07/14 01:30

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