理想郷 公演情報 小田尚稔の演劇「理想郷」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    いつか観たいと思っていた、小田尚稔の演劇。
    私には昔から極度の不安やストレス、寂しさや心細さなどを感じた時に髪や爪をしきりにさわったり、お布団や布類で肩や足下まですっぽり隠さないと落ち着きを保てなくなる癖?があるのですが、観劇中にその状態になってしまい、自分でもとてもびっくりした。だけど、このざわざわやモヤモヤした感触にこそ、この演劇の核心(やそれと繋がるヒント)があるのかもしれないと思ったりしていて、いまもまだそのことを色々考えています。信頼を寄せる知人に感触を吐露しながら心の整理をつけさせてもらえたのも有り難かった。水性には2回目の来訪。図らずも通行人がキャストに、場合によってはドラマそのものを生む空間でとても好き。今回もっとも食らったのは、絶妙なタイミングで横切った二人の子どもかな。あと、美術のチョイス、使い方好きでした。
    存分に戸惑った観劇ではあったんだけど、帰宅して改めてチラシを眺めつつ、シンパシーを感じることだけが演劇の豊かさではないことを痛感したり、(ネタバレBOXに続きます)

    ネタバレBOX

    同時に、時間が少し経ったことで、このえもいわれぬ気持ちは、あの中の誰か、だとしたら多分最後に出ていった女性かな、に対するエンパシーであったようにも感じたり。はたまた、普段の私が良くも悪くもあまりに感情移入が強く、演劇にも潜在的に共感を求めがちであることにつくづく気づいたりもしました。それは言い換えればやはり他者への勝手な期待でもあって、劇中でも示唆されていたようにそれは"理想郷"においてはともすれば攻撃になりうるかもしれない。だけど、私は女性の逃げ場は決して女性間の戦場にはならないことを信じているし、対立のゴングはいつも第三者が鳴らすとも思っている。もっといえばシェルターなんてわざわざつくらなくてもみんなが安心して暮らせることが本望で。勿論、理想だとはわかっているけれど。
    あそこに男性はいなくて、その皮肉なまでの不在、気配の無さが、分断や対立の種子となる無関心さとしてかえって際立っているようにも見えて、多分私は自分の描く"理想郷"と目の前の"理想郷"のギャップに狼狽えたのかな、と今ようやく言葉が追いついてきました。こういう体感こそ残しておくべきなのかも、と思っています。観られてよかった。
    ただ、「満足度」という側面からこの作品を判断するのはとても難しい。もちろん、作品の良し悪しという意味ではなく、あの光景を見て「満足」して帰るのはとても無理があるというか…。観た人と出来るだけ沢山の感想を共有したい。そんな作品でした。

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    2024/05/28 01:37

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