最初の二十面相 公演情報 劇団身体ゲンゴロウ「最初の二十面相」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    説明では、江戸川乱歩「怪人二十面相」と谷崎潤一郎「小さな王国」の翻案とあるが、その印象は、「怪人二十面相」の怪しげな雰囲気・謎解きの世界 という枠に「小さな王国」の内容を取り込んだ異色作といったところ。特に 学校を怪人二十面相に見立てたところが妙。

    描かれていることを理解するためには、たくましい想像力がないと難しく(⇦自分だけかも)、見巧者向けといった印象を受けた。会話は説明のような台詞、それが理屈付けのようで 観ながら考えていた。もう少し 観ただけでスッと分かるような…。
    もっと多くの人に観てもらいたい作品だけに 惜しい気がする。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし)【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、ダンボール箱で築いた壁、外から食事等が差し入れられる所が1か所。上演前には椅子が数脚置かれている。下手にポール。監禁されているという設定のため、ほぼ素舞台。

    物語は、云年前の小学校時代や現在の状況--監禁場所になり、場所と時間を変化・往還させて展開していく。まず小学校時代--担任の女教師が学級運営に苦慮しており、30人いた生徒が いじめなどで不登校になり、今では20人学級。そんな時、転校生 沼倉の助けで平穏を得たかのようだが…。沼倉は学級内に理想の街(国)-N国を築く。N国の紙幣を発行しモノを買う。モノは各自の家庭から持ってくるが、いつの間にかモノ不足が生じてくる。一見平等に思えた国の綻び、モノを補うために盗むようになる。1人の犯人という訳ではないことから、犯人像を特定できない。まさに二十(人)面相である。

    一方 現在は、教師や旧友が或る場所に監禁、いや自分達で留まり死を望んでいるよう。SNS等で自殺メンバーを募ったような描き方だ。いつの間にか沼倉が提唱したN国への入国を望む。そのためには或る条件をクリアすること。小さな王国、そこは共産・共生といった、すべて善人で平等な社会を目指すことだったが、その過程で裏切りや粛清といった仲間割れが起きる。この色々な場面が錯綜し、断片的にしか理解出来ないところが恨み。

    理想と現実の乖離、その陥穽にもがく人々をポップに描いたような劇作。表層はコミカルに観せ、その真(実)は、色々な社会問題(カルト・テロ集団等)を盛り込んだ問題作と言えよう。
    演出は、入国迄の日数等をテロップのように映し 集中させる。舞台技術も音楽で効果的な情景イメージ、照明の諧調で印象深く観せる工夫など巧い。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/05/26 00:29

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