八月花形歌舞伎 公演情報 松竹「八月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初役、勘太郎さん、お見事でした
    「四谷怪談」通しを、大好きな女優さんを誘って、観に行きました。

    たまたま、新婚の、伊右衛門お岩コンビ。
    海老蔵さんの伊右衛門は、良くも悪くも予想通りでしたが、勘太郎君は、期待以上の素晴らしい初役でした。

    序幕の与茂七の軽快な演技振り、実直な小平、哀切なお岩と、3役を、どれも破綻なく務め上げ、初役で、ここまで、演じきった「四谷怪談」は、もしかしたら、初めて観たのではと思う程。父親である勘三郎さんのお岩を踏襲してはいるものの、伊藤家からの毒薬を、ありがたがって一つ残らず飲み干そうとする哀切さは、お父上以上だったように、感じました。

    獅童さんの直助権兵衛、七之助さんのお袖もとても良かったので、2人の「三角屋敷の場」がカットされたのは、残念でしたが、猿弥さんの愉快な解説で、カット場面の粗筋説明があったのは、大変観客に親切で、好感が持てました。

    ネタバレBOX

    勘三郎さんが、コクーン歌舞伎などで、若いヒトにもわかりやすい歌舞伎上演を積極的に行うようになって、ようやく、歌舞伎の本公演でも、そういう空気が生まれて来たのだなと実感できる、大変嬉しい気持ちになる公演でした。

    序幕から、陰隠滅滅とした雰囲気になりがちな演目なのに、今回は、序幕から、やけに軽快な雰囲気で、与茂七とお袖の夫婦の再会や、伊衛門と直助権兵衛の悪党2人の殺し場後の、結託シーンも、まるで、喜劇テイストで、ずいぶん、様変わりした「四谷怪談」でした。

    でも、お岩が、伊藤家の親切を信じ切って、血の道の薬と偽られた面相が変わる毒薬を、拝みつつ、飲み干すシーンは、哀切極まり、胸が痛くなります。

    勘太郎さん、3役を、見事に、演じ分けて、本当に感嘆してしまいました。
    中村屋3代のお岩、皆、拝見していますが、今後、一番好きなお岩になりそうです。
    海老蔵さんではなく、菊之助さんの伊右衛門とのコンビで、観たい気がしました。
    海老蔵さん、どうも、わざとらしい台詞回しに感じます。最初から、すごく嫌な男で、何故お岩と縁りを戻したかったかが、見えてきません。伊右衛門は、最初は、お岩を愛していた筈なのに…。
    勘太郎さんが、3役とも良いだけに、残念でした。

    お岩、小平の戸板返しから、だんまりで与茂七に早替わりするところが、実に鮮やかで、嬉しくなりました。

    3階席に、幽霊が出現したり、猿弥さんの愉快な解説があったり、お客さんに親切な歌舞伎上演形態になり、今後の歌舞伎界に希望が持てて、歌舞伎歴50年の私には、とても心嬉しくなる「四谷怪談」でした。

    8

    2010/08/11 01:56

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  • KAEさま

    KAEさまのこの回答を読ませていただき、単なる回答というだけでない感動を味わうことができました。うまく、言い表せませんが、誠実にお答えいただき、本当にありがとうございます。

    >笑いが起きていたのは、田圃の場で、直助と伊右衛門が、、悲嘆にくれるお岩姉妹の後ろで、しめしめと合図し合うところと、お岩が、お歯黒の仕度をしている時に、宅悦が、面相の変わったお岩の顔が近づくと、ぎょえーっとなるところぐらいで、まあ、許容範囲だったと思います。

    あ、それならじゅうぶん許容範囲ですよね。よかったです。ホッとしました。


    >実は、お岩がさんざん悲惨な目に合っているのに、大爆笑が起こった舞台は、私も目撃し、あの時は、さすがに、もう歌舞伎も衰退かと、嘆かわしくなったのを覚えています。
    コクーン歌舞伎の時だったのか、歌舞伎座でだったかは失念しましたが…。
    「勧進帳」で、海老蔵が、実に劇画チックな演技で、爆笑をさらっていた時も、愕然としましたけれどね。

    自分が観たときは歌舞伎座でした。初演だったような?いくらなんでも笑うなんてヒドイと思いました。誰だか忘れたのですが、何かの雑誌に、その場面について、四谷怪談を観たタレントの人が「何かドリフのコントっぽくていいね。歌舞伎って面白い」と書いていて、腹が立ちました。
    ちなみに、私だけの感想かもしれませんが、海老蔵さんの「助六」を初めて観たとき、「助六ってこういう芝居だっけ?」とショックを感じ、戸惑いました。当時、「型破りの新時代の助六誕生!」ともてはやされてたときですが、台詞回しや動きが現代劇みたいに大雑把で粗く、違和感が強くて「歌舞伎十八番」のそれとは別物に見えました。でも、これが「平成の助六」なのかな、と。時代によって変わっていくことに異を唱えるつもりはないですけども。かつて11代目団十郎さんが武智鉄二さん演出の「勧進帳」に「型を壊している」と激怒したことを思うと、お孫さんのこの「助六」をはたしてどう感じるか、聞いてみたかったです(笑)。

    >歌舞伎座閉鎖前に、物見遊山でいらしたお客さんが多かった時は、3階席は、本当に悲惨でしたよ。壮絶な殺しの場面で、お煎餅のボリボリや、茶の間かと思うような私語で、ほとんど台詞が聞き取れないこともしょっちゅうでした。

    閉鎖前、そういうことがあったのですね。TVの情報番組の宣伝を見て、来た人も多いようですしね。ずいぶん以前のバブルのころ、歌舞伎ブームで新しいお客さんが増えたときは、3階席に大学生らしきグループが押し寄せ、私語も多く、お菓子をくちゃくちゃ食べ、休憩時間もコンパ会場のようにうるさく、私がいつ行っても雰囲気が悪かったので、昔ながらのファンの年長の友人に聞いたら、同感だと言っていました。当時、淀川長治さんも、「歌舞伎座の雰囲気が悪くなったので、近頃は行きたくなくなった」と随筆に書かれ、知人にももらしていたようです。

    >それを考えると、今回のお客さんは、とてもお行儀が良い方ばかりで、ほっとしました。

    本当ですね。今回、観ていない部外者ながら、私もお話を伺って、それはよかったな、と思いました。

    2010/08/14 13:16

    きゃる様

    御質問にお答えし忘れていました。ごめんなさい。
    今回の公演では、お岩が甚振られるところでは、皆さんじっと固唾を呑んで観ていたように思います。

    笑いが起きていたのは、田圃の場で、直助と伊右衛門が、、悲嘆にくれるお岩姉妹の後ろで、しめしめと合図し合うところと、お岩が、お歯黒の仕度をしている時に、宅悦が、面相の変わったお岩の顔が近づくと、ぎょえーっとなるところぐらいで、まあ、許容範囲だったと思います。

    実は、お岩がさんざん悲惨な目に合っているのに、大爆笑が起こった舞台は、私も目撃し、あの時は、さすがに、もう歌舞伎も衰退かと、嘆かわしくなったのを覚えています。
    コクーン歌舞伎の時だったのか、歌舞伎座でだったかは失念しましたが…。
    「勧進帳」で、海老蔵が、実に劇画チックな演技で、爆笑をさらっていた時も、愕然としましたけれどね。
    日本人のお客さんより、よっぽど外国のお客さんの方が、作品の本質を理解しているなあと思う時がありますね。

    歌舞伎座閉鎖前に、物見遊山でいらしたお客さんが多かった時は、3階席は、本当に悲惨でしたよ。壮絶な殺しの場面で、お煎餅のボリボリや、茶の間かと思うような私語で、ほとんど台詞が聞き取れないこともしょっちゅうでした。

    それを考えると、今回のお客さんは、とてもお行儀が良い方ばかりで、ほっとしました。

    2010/08/13 16:43

    KAEさま

    >夢の場というのは、大詰めだったのですね。私は、伊右衛門宅の場のお岩が死んだ後の、シーンかとばかり勘違いしていました。

    ああ、そういう意味です。大詰めですから、夢の場が出ることはないなと気づきました(笑)。
    で、恐縮ながら前の質問ですが、お岩がいたぶられる場面で今回笑いは起きてましたか?

    >完売のチケットも、前月末には、決まって戻りが出ますし、観たい日の前日とかにも桟敷席とかでも戻りがありますから、松竹に関しては、諦めずに、しょちゅうネットで確認するようにしています。

    そうなんですか。今後買うときの参考にします。

    2010/08/13 10:57

    きゃる様

    夢の場について訂正です。

    今、コクーン歌舞伎の筋書きを見ていて、間違いに気付きました。
    夢の場というのは、大詰めだったのですね。私は、伊右衛門宅の場のお岩が死んだ後の、シーンかとばかり勘違いしていました。
    きゃるさんの方が、悠に知識がおありなのに、うろ覚えで、変な返答をして、申し訳ありませんでした。

    で、改めて、ご返信致します。大詰めの夢の場もカットでした。砂村隠亡堀の場の後、猿弥さんの解説となり、すぐ、蛇山庵室の場でした。
    昼夜の2公演でなく、3部制ですから、致し方ありませんが、本当に、もう少し、お袖と直助を観たかったですね。

    2010/08/13 00:03

    きゃる様

    夢の場が、出ないのは、与茂七との早替わりがあるからではなく、小平との早替わりがあるからですね。

    子供の頃、私も、どうも与茂七と小平の区別がつかず、混乱したことを覚えています。どちらも、町人の身なりなので、薬を懇願して、納戸に閉じ込められたのは、与茂七なのかと錯覚したことがありました。今の若いお客さんも、そういう混同をされるかもと思いましたから、解説で、与茂七は生きていると猿弥さんが言った時に、あー親切だなあと思ったわけです。

    チケット、確かに、2階、3階席は、発売日に既に完売でした。それで、お誘いした方の分だけ、1等席を買い、私は、松竹のネット販売で、戻りが出るのを虎視眈々と待ちました。
    完売のチケットも、前月末には、決まって戻りが出ますし、観たい日の前日とかにも桟敷席とかでも戻りがありますから、松竹に関しては、諦めずに、しょちゅうネットで確認するようにしています。
    幸い、3階席中央のチケットが手に入りました。演舞場は、3階の中央は、2列のみなので、花道もしっかり見られて、それで、4000円ですから、お得ですよね。

    2010/08/12 19:38

    KAEさま

    >はい、夢の場面も省略でした。だから、今回、お岩は、亡くなってからはあまり活躍致しません。

    与茂七と代わるのでは「夢の場」は出ませんよね。気づかずにバカな質問をしてすみません。
    七之助さんがお岩をするときがあれば、夢の場があってもいいかもしれませんね。先々代梅幸(亡くなった梅幸の先代)の線で。

    >最多登場は、とにかく海老様でした。(笑)従って、海老様伊右衛門は、あまり思い悩みません。

    はい、わかる気がします(笑)。

    >だから、初めてご覧になった方は、きっと今ひとつ理解し得ないストーリー展開だったのではと思うので、三角屋敷の、猿弥さんの解説は、カット場面ばかりではなく、他の部分もより理解しやすくして、本当に良い企画だったと思いました。
    殺されたのは、与茂七だと思っているお客さんもいたのではと思いますし…。

    なるほど。

    >今回、嬉しかったことがもう一つ。中村屋の長老、今月90歳になられる小山三さんが、相変わらず、口跡も良く、滑舌も完璧に、舞台をたったかと歩いて、存在感を示していらしたこと。三代の中村屋の「四谷怪談」に御出演になって、ご自身もでしょうけれど、こちらも感無量でした。

    小山三さんは本当に不死身ですね(笑)。歌舞伎の宝だと思います。


    いろいろ教えていただいてありがとうございます。やはり、「四谷怪談」のチケットが他にくらべて人気なんでしょうね。買えそうにないので、せめてKAEさんのお話だけでも・・・。

    2010/08/12 10:11

    きゃる様

    はい、夢の場面も省略でした。だから、今回、お岩は、亡くなってからはあまり活躍致しません。
    最多登場は、とにかく海老様でした。(笑)従って、海老様伊右衛門は、あまり思い悩みません。

    だから、初めてご覧になった方は、きっと今ひとつ理解し得ないストーリー展開だったのではと思うので、三角屋敷の、猿弥さんの解説は、カット場面ばかりではなく、他の部分もより理解しやすくして、本当に良い企画だったと思いました。
    殺されたのは、与茂七だと思っているお客さんもいたのではと思いますし…。

    勘太郎さんは、野田さんの芝居等、かなり他流試合も経験したため、海老様のように、演技が型通りではなく、きちんと感情表現が、身のこなしに付随して来るんです。だから、それぞれの役がとても魅力的でした。

    私も、国立劇場で、子供達が、お家芸の大役を演じる勉強会はずいぶん観ました。勘九郎さんも、光輝さんも、橋之助さんも、5~6歳の頃から、名優の片鱗を見せていましたよね。勘九郎さんは、私より1歳下でしたから、つまり、私も5~6歳の頃から、名優を見抜く目だけは備わっていたのかなと、ちょっと、子供時代の自分を自慢したい気持ちが湧く時があります。(笑)

    今回、嬉しかったことがもう一つ。中村屋の長老、今月90歳になられる小山三さんが、相変わらず、口跡も良く、滑舌も完璧に、舞台をたったかと歩いて、存在感を示していらしたこと。三代の中村屋の「四谷怪談」に御出演になって、ご自身もでしょうけれど、こちらも感無量でした。

    2010/08/11 23:30

    KAEさま

    KAEさんの「四谷怪談」評、楽しく拝読させていただきました。ありがとうございます。胸にビンビン伝わるレビューで、感激してます、とてもとても!
    興味のもてる配役ですね。三角屋敷はカットですか?面白いけど時間の関係でカットされることが多い場面でもありますね。

    >海老蔵さんではなく、菊之助さんの伊右衛門とのコンビで、観たい気がしました。
    海老蔵さん、どうも、わざとらしい台詞回しに感じます。最初から、すごく嫌な男で、何故お岩と縁りを戻したかったかが、見えてきません。伊右衛門は、最初は、お岩を愛していた筈なのに…。

    ここ、気に入りました(笑)。観てないのに伝わってくる。KAEさんの海老蔵評には親近感がもてちゃいましたー。「菊之助さんの伊右衛門」のご提案、さすがKAEさん、名案ですね。

    中村屋三代のお岩さま、そうですね、私も2代まで観てきました。夏に若手が気を吐けるこの花形歌舞伎は、歌舞伎にとって幸せな時代が来たんだと思います。私が10代のころ、若手が勉強会以外で「四谷怪談」を通すなんて考えられなかったですものね。吉右衛門、幸四郎兄弟が若い頃やったくらいですか。木の芽会か東宝歌舞伎か忘れましたが。
    ずいぶんまえに当代の勘三郎(まだ勘九郎のころ)の四谷怪談を観た時、お岩が引きずられる場面で客席がドッと笑ったんですが、ある劇評家のかたがそれを「若い観客がお笑いのように笑っているのに違和感を覚えた。お岩の哀切な場面で笑いが起こるなんて観る世代が変わってきたのか、複雑な思いだ」と書かれていて、なるほどなーと思ったのですが、今回の客席はいかがでしたか?
    ちょうど自分の意志で本格的に歌舞伎を観始めた高1のころ、国立で「四谷怪談」の通しを見ました。そのときでさえ、「三角屋敷」を当時の染五郎、猿之助、精四郎の若手3人に任せたことには賛否両論ありました。「夢の場」が出なかったので、代わりに中村屋(先代勘三郎)が雨に降られて、花道を通りかかる女お花を演じたのですが、「傘をパッと開いたとき、どうですか?綺麗に見えますか?」とプログラムに書いてあって、一緒に観た同級生が「綺麗になんか見えないよねー」と言ったのがおかしくて大笑いした思い出が。「夢の場」は、よく本に載ってる11代目団十郎と歌右衛門の舞台写真が印象に残ってますが。今回は「夢の場」もカットだったんでしょうか?勘太郎さんなら、若女形のつくりになっても、お祖父さんと違い、違和感はないでしょうけどね 笑。
    いやいや、お邪魔して、すみませんでした。

    2010/08/11 18:44

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