銀河鉄道の夜 公演情報 青年団「銀河鉄道の夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/04/26 (金) 14:00

    駒場のアゴラ劇場サヨナラ公演、青年団100本目の「銀河鉄道の夜・チーム蠍座」を観る。
    シンプルなセットだと思ったが、これは2011年フランス公演のために創られた作品で、
    劇場からの依頼が、全国を回る為に簡単なセット、出演者は4人までというものだったから。
    その公演中日本で東日本大震災が起こり、フランス公演の意味は大きく変わったという。
    子どもにとって早すぎる「お別れ」がどれほど重く理不尽なものか、それは計り知れない。
    ラスト、ジョバンニのカンパネルラに呼びかける台詞が印象に残る。

    ネタバレBOX

    舞台上には大きな積み木のような丸・三角・四角が点々と置かれ、
    それらはやがて教室になり、街並みになり、列車の座席になり、町はずれの丘になる。
    客入れの時から正面の壁にはキラキラした宇宙の映像が映し出され、まもなく
    「天の川は何で出来ているか」という学校の授業が始まる・・・。

    この有名な物語は、終始もの悲しい響きを帯びている。
    ジョバンニの母親は病気で、父親は遠い海へ仕事に行ったきりなかなか帰って来ない。
    彼はいくつも仕事を掛け持ちしていて、同級生からはいじめられている。

    カンパネルラは「ほんとうのしあわせ」とは何かを考えている。
    ジョバンニをいじめる仲間に加わりはしないが、いじめを止めさせようともしない。
    両親に対して無条件に甘えられる家庭ではなさそうなひんやりとした空気を感じさせる。

    銀河鉄道で出会う人々は ”死者を見守る、あるいは見送る” 人々だろう。
    鳥採りが「白鳥を捕まえて食べる」証拠にカバンから「鳩サブレ」を出したのには大笑いした。

    微妙に発音しにくい「カンパネルラ」という名前を、
    ジョバンニが大変きれいに転がるような発音で連呼するので感心した。
    彼のカンパネルラに対する繊細で一途な友情を感じさせる。

    100年近く前に生まれたこの物語は、現代と同じ湿り気を帯びている。
    子ども時代の屈託に満ちた、解決方法を知らない絶望感に深く共感せずにいられない。
    大人になってからこの作品を観たり読んだりすると、子供の頃よりずっと哀しく苦しい。
    だから繰り返し逢いに行く。独りぼっちのジョバンニに逢いに行く。
    「銀河ステーション♪、銀河ステーション♪」という、歌うようなアナウンスに誘われて・・・。


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    2024/04/27 23:37

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