実演鑑賞
満足度★★★★
「始めたそばから消えゆく無駄。その演劇を、表現を私は断じて無駄だと思わない。無駄なき無駄に向かう矛盾を明日も勇んで生きたいと思う」。私が初めてドラマティックゆうやを観た時に綴った感想の最後の一文である。そして、今なおその実感を握りしめている。
前々作『不幸の光』でグッと心を掴まれ、前作『星の戦い』でやっぱりあの光は本当だったと噛み締め、そして、『明日の人 再演』ではっきりと分かった。自分がどうしてこんなにも劇団ドラマティックゆうやの演劇に心惹かれるのか、が。奇しくも登場人物同様に(物語が作られた時系列でいうところの)過去に戻ってはじめて私は分かった、というわけである。そのことが私の”明日”をどう変えるのか。それはまた明日が過去になるまでは分からない。ただ、その変化はきっと「歩き出す時に右足から出るのか、左足から出るのか」くらい小さなことで、同時に、アームストロングよろしく「この一歩は小さいが私にとっては偉大な一歩」であるかもしれない。そうだ。きっとそうだ。そう信じさせてくれるから私は一年に一度お守りを握りしめるようにシアターブラッツに向かうのだと思う。「自分の信じているものは人とは“違う”かもしれないけど、決して“間違い”じゃない」。情報量の多い新宿の街を歩きながら、そう思った。思うことができた。それは、演劇の力ほかならなかった。始めたそばから消えゆく、同じ時は二度とない、撮らねば記録すら残らない過去の芸術、演劇の力なのだと。だからやっぱり、無駄なき無駄に向かう矛盾を明日も勇んで生きたいと思う。
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