実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
表層的には、演劇(虚構)としての面白さ可笑しさの中に、現代日本の課題を点描して物語を紡いでいく。日本のどこかにあるような情景を立ち上げているが、必ずしもリアルではない どこかずれているといった印象だ。過度に感情移入させることなく、物語として楽しんでもらう、そんな娯楽性を感じさせるが…。
シャッター商店街となった一角にあった白鳥鮮魚店が舞台。日本語教師のボランティア、そして外国人を自宅に住まわせ共同生活をしている白鳥亀子、そして久しぶりに実家へ帰ってきた次男 香魚夢の親子を中心に巻き起こる人情劇。そして 驚かされるのが舞台美術。劇場内には日本の原風景が、そして個性豊かで人情味に溢れた人々が生き生きと描かれている。
同居人が外国人という設定であるが、別に外国人である必要はない。家族ではない他人---街(地域)の人々との心温まる内容でも物語は成り立つ。夫婦で魚屋を営んでいたが、夫は8年前に亡くなり妻(亀子)が一人になった。息子たちは家から離れ、今では ほとんど帰ってこない。切実さと可笑しみが切り取られた光景がそこにある。この独居(老人)問題だけではなく、色々な課題を投げかけ 観客それぞれが抱く思いに寄り添う(共感を得る)ような描き方だ。
当日パンフに脚本・演出の谷藤太 氏が「古き懐かしき昭和の香りがそこかしこに漂っています」と書いており、まさしく郷愁を思わせる作品に仕上がっている。観応え十分。
(上演時間1時間55分 途中休憩なし)