夕立【作・演出 赤堀雅秋(THE SHAMPOO HAT)】 公演情報 劇団姦し「夕立【作・演出 赤堀雅秋(THE SHAMPOO HAT)】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    また素敵なユニット誕生!
    3人の女優さんのユニットと言うと、真っ先に、るぱるが思い浮かびますが、またるぱるに匹敵するような素敵なユニットが誕生しました。

    あめくみちこさん、かんのひとみさん、那須佐代子さん。いづれも、演技力に定評ある、中堅女優さん。
    だけど、このお三人の相性があまり想像できませんでした。観るまでは…。

    観劇して、ビックリ!!すごくピッタリの相性!!その上、今回の客演の、神保さんと清水さんが、これまた素晴らしい演技派なので、キャストは、皆さん特筆演技賞ものでした。

    今まで苦手だった赤堀さんの脚本、演出も、共に素晴らしく、とてもクオリテイ高い、三拍子揃った、旗揚げ公演でした。

    今日が、楽日でしたが、こんなことなら、もっと早くに観に来て、1人でも多くの方にオススメすれば良かったと、後悔しました。
    、、
    笑って、泣いて、切なくて、心に沁みる素敵な舞台作品でした。

    ネタバレBOX

    全く、性格も、置かれた状況も異なる、スーパーの女性パートタイマー、3人。

    新井あきらは、5年前に、夫を交通事故で亡くした後、3人の子供と義母との生活を支えるため、昼はスーパーで、店長補佐のような仕事、夜は、近くのバーで、ホステスとして、働き、生計を立てている。
    車敏子は、世話好きで、お人よしの独身女性。あきらを見兼ねて、自発的に、あきらの子供達の面倒を見たりしている。
    最近、パートを始めた、万歳秀美は、同棲中のうだつの上がらない男との間に、子供を妊娠した様子で、将来のためにもと、パート勤めをしているものの、職場にも、店長代わりのあきらにも、何かと不満が尽きない。
    そんな、性格も、生活も異なる3人の前に、お店の品を万引きした、裕福な歯科医夫妻の1人息子が絡んで、最後には、少しだけ、3人の女性が、お互いを理解し、共感できるようになるまでの、切なく、可笑しい人生模様が、何とリアルに描かれていたことか!!

    反目するあきらと秀美の間に入り、やきもきする、お人よしの敏子役の、かんのさんのハラハラの気遣い振りが、妙に可愛く健気で、観ていて笑いながらも切なくなる。
    秀美役の、あめくさんは、ウ゛ードビルショーではなかなか演じない役どころで、るぱるなら、岡本麗さんタイプの、独自性の強い女性を、とても小気味良い演技で見せて下さって、魅了されました。
    あきら役の那須さんは、正義感が強く、逞しく生きているようで、気丈さの陰に、淋しい女心を隠している様を、哀切に好演されました。

    ここに、裕福で、あまり問題意識のない、不思議感覚の万引き少年を、ユニークに演じた清水優さんと、穏やかな気性のあきらの義母と、万引き少年の厳格な祖母の、真逆の2役を、見事に演じ分けた神保さんの、演技派2人の客演が助け、それは、もう、おかしくも切ない、中年女性の心の声が、普段のリアルな台詞の中に滲み出る、素敵な素敵な佳品舞台。

    3人が織り成す、何気ない生活の中の、珠玉の台詞に、何度も、笑わされ、泣かされ、感情を、すっかり揺さぶられ続けました。

    秀美の思い出話や万引き少年の作り話に、誘発される、敏子の妄想の中の「真夏の夜の夢」の寸劇が、これまた秀逸でした。敏子は、2人のパート仲間には、決して、自分の感情を吐露することはないのだけれど、心の中では、様々な夢想をして、生きていて、つい、情に絆され、少年に騙されそうになるあたり、まるで、「女殺油地獄」の、殺される女を彷彿として、哀れでした。

    赤堀さんが、こんなにも、女性の気持ちがわかる作家だとは、思いもしませんでした。

    挿入歌の、ちあきなおみの歌や、秀美が、カラオケで歌う「セーラー服と機関銃」の歌に、自分の青春時代の思い出も喚起され、自分でも、思わぬシーンで、何度も涙を拭いました。

    久しぶりに、全てに満足の行く舞台を拝見して、一度で、この、劇団姦しファンになりました。(でも、正直言うと、この劇団名には、やや異議ありですが…)


    7

    2010/08/01 23:44

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  • tetorapack様

    何だか、お返事、強要したようで、申し訳ありません。
    でも、正直、読んで頂けて、幸せです。(笑)
    これ、書いたら、ログアウトされていて、送信できず、また書き直したりして、相当気合入れて書き直したものですから。(笑)

    丁寧に読んで頂けて、引用までして頂いて、この文章も、命を得て、幸いでした。
    ありがとうございました。

    2010/08/12 01:55

    KAEさん

    興味深く読ませていただきました。

    >もう、それだけで、あきらの性格やものの考え方、義母の性格や対処の仕方、そして、この2人の人間関係までが、わずか数分で、観客には、見通せて、この2人をずっと前から見知っている気になれるんです。
    >後半、あきらには思うヒトがいて、それを知った義母が、嫁の幸せのために、自分は、介護老人ホームに入るつもりだと、言い出し、それを必死に、あきらがやめさせたいと説得するシーンがあるのですが、こうした、冒頭からの、実に秀逸な人間描写の積み重ねがあるので、観客は、あきらが心から義母に一緒にいてほしいと思っていることがわかり、あきらの叫びに共感して、涙したりしてしまうんです。

    いやー、そうでしたか。「冒頭からの、実に秀逸な人間描写の積み重ねがあるので、観客は、あきらが心から義母に一緒にいてほしいと思っていることがわかり、あきらの叫びに共感して、涙したりしてしまうんです」は、私も、観ていたら、もう、だめだったでしょう。特に私の場合、自分の母を長年、女房とともに介護して昨年春に亡くし、今、90を過ぎた女房の母(気丈で独り暮らし)の事があるだけに、こういうのって、よく分かります。脱線しましたが、秀逸な脚本・演出の妙味って、こう言う点に現れますよね。

    >また、こういう性格のあきらなら、恋人がいることも、誰にも言わないだろうと納得できますから、後半まで、そういう気配が劇中に描かれず、唐突に、その事実が暴露されても、ちっとも御都合主義な脚本とは感じないんです。

    なるほど。まさに「大変計算され尽した秀逸な脚本」故になせる技ですね。

    >赤堀さんが、こんなに、女性心理を描ける作家とは、全く知らなかったので、楽日で、舞台上に挨拶に現れた赤堀さんに、心の中で、平謝りし通しでした。
    ホントに、この作品一つで、一挙に、赤堀ファンになってしまいました。

    はい、私も心に留めておきますです。

    >【姦しい】って、漢字で書くと、何だか凄みがあり過ぎませんか?
    もう少し、この劇団や作品の雰囲気を伝えるチラシや劇団名にすれば良かったのにと、とても残念な気がしています。

    そうですね。漢字だと、ちょっと、違う雰囲気が出てきますよね。フライヤーは自分の場合、「これは、しっかりした芝居だな」って、静かな説得力と言うか吸引力を感じまして、それで注目した面もあるのですが、劇団名はたしかに、ちょっと…。KAEさんと同じ印象です。

    これだけ、自分が観られなかった公演を詳しく知ることができるのって、まさにコリッチならではの魅力ですね。ありがとうございました。

    2010/08/12 00:55

    tetorapack様

    またまた、私の、【良かったものをヒトに薦めたい病】を、刺激して下さって、感謝感激!
    ちょっと、調子に乗って、また語ってしまっていいですか?

    この作品、あきらと義母が、夫の事故現場にお供え花を持って、佇む場面から始まるのですが、ここで、あきらが、自分達を睨んでいる蕎麦屋に対して、義母に愚痴を言うのです。

    「こんな場所にお供えなんかされたら、商売の邪魔だと言われたけれど、あそこのお店は、元々蕎麦がまずいから、それで、ヒトが寄り付かないのに…」的な、蕎麦屋に対する不服を言い立てるのです。すると、義母は、穏やかな口調で、「まあ、いいじゃないの」的な反応をします。

    もう、それだけで、あきらの性格やものの考え方、義母の性格や対処の仕方、そして、この2人の人間関係までが、わずか数分で、観客には、見通せて、この2人をずっと前から見知っている気になれるんです。

    後半、あきらには思うヒトがいて、それを知った義母が、嫁の幸せのために、自分は、介護老人ホームに入るつもりだと、言い出し、それを必死に、あきらがやめさせたいと説得するシーンがあるのですが、こうした、冒頭からの、実に秀逸な人間描写の積み重ねがあるので、観客は、あきらが心から義母に一緒にいてほしいと思っていることがわかり、あきらの叫びに共感して、涙したりしてしまうんです。
    また、こういう性格のあきらなら、恋人がいることも、誰にも言わないだろうと納得できますから、後半まで、そういう気配が劇中に描かれず、唐突に、その事実が暴露されても、ちっとも御都合主義な脚本とは感じないんです。

    赤堀さんが、こんなに、女性心理を描ける作家とは、全く知らなかったので、楽日で、舞台上に挨拶に現れた赤堀さんに、心の中で、平謝りし通しでした。
    ホントに、この作品一つで、一挙に、赤堀ファンになってしまいました。

    この劇団姦しは、劇作家選びの目も相当確かだと感じました。

    だから、それだけに、この劇団名と今回のチラシは、ちょっと残念でした。
    【姦しい】って、漢字で書くと、何だか凄みがあり過ぎませんか?
    それに、あのチラシ、もっと隠隠滅滅とした芝居の雰囲気を想像してしまいました。
    それで、しばらく、観に行くのを躊躇っていたくらいでした。
    もう少し、この劇団や作品の雰囲気を伝えるチラシや劇団名にすれば良かったのにと、とても残念な気がしています。

    2010/08/04 02:37

    KAEさん

    またも、ご丁寧な説明を入れての解説、恐れ入ります。
    一段と、脚本の素晴らしさと演じ手の妙味が伝わってきて、「観ておけばよかった」って感じ入りました。でも、KAEさんの丁寧なレビュー&このコメントによって、それが分かったので、感謝いたします。

    >赤堀さんの脚本て、ほとんど説明台詞がないんですよ。だから、これだけ、上手い役者さんが揃うと、もう、名作芝居のテキストにしたいような、秀作になっていました。

    ともに情感が伴わないと成立しない、脚本と演じ手の総合力による結果ですね。凄い!

    >あめくさんが、カラオケで、薬師丸さんの歌を熱唱するシーンを観て、私もつられて歌いたい気持ちになって、心の中で口ずさんでいたら、次のシーンで、帰宅した、那須さんが、同じ歌を1人歌うシーンがあり、客席の私と、登場人物の気持ちが重なっていたと、気付いて、何と秀逸な脚本!!と、感嘆してしまいました。
    >それと、個人的にとても受けたのは、性格的には、那須さん演じるあきらが、無駄な正義感に溢れ、自分にそっくりだった上~~何だか2人の女性に、ものすごく、自己投影してしまいました。

    分かります。そうした気持ちの重なりや自己投影してしまう思いとかが、私のよく言う「作り手・演じ手側と観る側の劇場空間の共有」という演劇がもつ最大の魅力であり、それを成し得ている芝居が、まさに「秀作」といえるのではないでしょうか。その意味で、これが秀作であったことは、KAEさんのこの表現で、この作品を観ることができなかった私には痛いほどよく分かります。

    でも、それを知り得て、本当に良かったです。ありがとうございました。

    2010/08/03 10:45

    tetora pack様

    書き忘れたことを思い出し、追伸です。

    劇中劇で、例の、演劇をやっていた妹をバラバラにした、歯科医の息子の話が出てきて、赤堀さんをどうも信じていない私は、また、早とちりで、【えー、あの息子が、あの犯人だって話なの?詰まんない】なんて、一瞬、思ったりしたのですが、それは、早合点で、これは、お金をせびられた独身女性が、【もし、私がお金を都合してあげなければ、彼はそんな風になってしまうかも…】と、妄想するシーンだったようなんです。
    そういう、ちょっと高尚な遊び部分も含め、大変計算され尽した秀逸な脚本だったと思います。

    それと、個人的にとても受けたのは、性格的には、那須さん演じるあきらが、無駄な正義感に溢れ、自分にそっくりだった上、あめくさん演じる秀美が、事あるごとに、「私には、何でもわかる。私は、他人の気持ちがお見通し」的な発言をしていたところ。私も、事あるごとに、【私は他人を見抜く力も、洞察力もずば抜けている】と、家族の前では繰り返し、呆れられている口なので、何だか2人の女性に、ものすごく、自己投影してしまいました。
    だから、自分とは異質な女性を演じた、かんのさんの表情や生き様に、一番魅力を感じたのかもしれません。

    他のユーザーの方も書いていらしたように、観る側の、年齢や経験や、感性などで、心の琴線に触れる部分は千差万別だとは思うのですが、きっと、観客は、全員、どこかに、自分や身近な誰かを重ねて観るに違いないと思える作品でした。こういう作品を、普遍的と言うのかもしれません。

    2010/08/02 23:45

    tetorapack様

    そうなんですよ!見終わった後、すぐ最初に思ったのは、コリッチユーザーの方々に申し訳なかったなという思いでした。tetorapackさんや、アキラさんや、りいちろさんや、きゃるさんにもご覧頂きたかったなあと…。
    皆さん、きっと気に入られるタイプのお芝居でした。

    赤堀さんの脚本て、ほとんど説明台詞がないんですよ。だから、これだけ、上手い役者さんが揃うと、もう、名作芝居のテキストにしたいような、秀作になっていました。

    あめくさんが、カラオケで、薬師丸さんの歌を熱唱するシーンを観て、私もつられて歌いたい気持ちになって、心の中で口ずさんでいたら、次のシーンで、帰宅した、那須さんが、同じ歌を1人歌うシーンがあり、客席の私と、登場人物の気持ちが重なっていたと、気付いて、何と秀逸な脚本!!と、感嘆してしまいました。

    神保さんの二役も全くお見事この上なくて、よく御存知ない方は、同じ方が演じているなんて気付かないのではと思いました。

    一日経っても、ワンシーン、ワンシーンの、役者さん全員の一瞬の表情や台詞回しが、懐かしく思い起こされます。
    こんな感覚になる芝居は、本当に久しぶりでした。

    次回は、是非是非、お見逃しなきよう!!

    2010/08/02 18:17

    KAEさん

    この作品、実は私も初めてフライヤーを手にした時から観たいと思っていたのですが、この時期はもっと早くからダンス公演やら仕事のスケジュールとかで、どうしても日程が取れずに断念しました。

    KAEさんが「観たい!」に登録していたので密かに「観てきた!」を期待していましたが、いやー、やっぱり良かったんですね。「また素敵なユニット誕生!」のタイトルからして、その秀逸さが分かりますが、レビューを読ませて貰って、なるほどな、と改めて分かりました。

    やっぱり実力派の中堅3女優がそろえば、あとは脚本がしっかりしていれば、それは間違いないですよね。詳細な内容説明にも触れてくれて、助かりました。

    今度は要マークしておきます。ありがとうございました。

    2010/08/02 16:26

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