La Mère 母 公演情報 東京芸術劇場「La Mère 母」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    5,6年前に作者ゼレールは「父」で、認知症の高齢者がみる世界を観客に体験させて、鮮烈な日本デビューを果たした。全く知らない人たちの住む別の場所と思ったら、それはよく知る娘夫婦の家だったというような。別々の俳優が演じるのがじつは同一人物という奇策で、当然別人と思っていた観客にもショックを与えた。

    前置きが長くなったが、「母」はこの手法の延長にある。舞台で起きていることは、現実なのか、母(若村麻由美)の脳内妄想なのか。最後になるまで、その境目がわからない。
    子離れできない母親の「からの巣症候群」を描いたということになる。極端すぎる気がするが、そこが妄想の妄想たるところなのだろう。でも「父」の変化球や、「息子」の多声性とどんでん返しに比べて、少々一本調子のように思った。

    ネタバレBOX

    いないはずの息子(岡本圭人)が現れ、帰ってきたのかと思えば、父(岡本健一)が「一人で何をやってるんだ」と、息子の存在を否定する。それでも息子は現れ続けるから、ほとんどは母のみる幻想なのである。
    息子は「ママは僕の人生を台無しにした」等、母への辛らつな批判を口にする。母の嫌いな妻のことを、母よりも会いたがったりして、母に対する他者性を見せる。じゃあ、これは現実なのか。実は逆で、妄想だからこそ母の心内に抑えた恐怖や、自分を責める言葉、見たくない最悪の想像が現れるのだろう。

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    2024/04/08 00:59

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