船を待つ 公演情報 ミクニヤナイハラプロジェクト「船を待つ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    “現代版ゴドーを待つ人々”。その言葉とスヌーヌー主宰で劇作家でもある笠木泉さんの俳優としての久しぶりの出演に惹かれて観劇を決めていました。

    ネタバレBOX

    入ってまず驚いたのが吉祥シアターの使い方。岸辺から水辺を臨むように客席と舞台が配置されていて、舞台の「長さ」がそのまま物語における時の「永さ」に接続しているようで、不思議な感覚に導かれました。目に見えぬ時空を掘り下げ、扱う戯曲ならではの演劇の魔法に感嘆。
    生と死のあわいにも、夢と現の瀬戸際にも思える船着き場で巡りあったり、あえなかったり、重なったり、重ならなかったり、おそらくは人の実体はない魂のような、精神のようなものが水辺で交錯してゆく様を3名の俳優の身体が豊かに伝えていました。終わりを待っているようにも、始まりを待っているようにも見える人々を前に「待つ」という言葉、行為が含むあらゆることに思いを馳せました。それは今起きているたくさんの出来事、出来事なんて言葉では足らない事件や戦争にも繋がっていて苦しくなる部分も。死んだ後と生まれる前、その二つはこんな風に船着き場のようになっているのかもしれない。対岸にいる人々を見つめ、自分もまた相手にとっては対岸であること、そこからこちらはどんな風にも見えているのだろうかと。そんな風にふと魂の行方についても考えを巡らせました。ラストの笠木さんの涙が生命を讃えているようで、同時にその透き通る水分そのものを讃えたい気持ちにも駆られて胸がギュッと。哀切と歓喜が同じ分だけ染み込んだ美しい横顔でした。観劇後、外に出る時に劇場は虚構と現実のエントランスであり交点なのだ、としみじみ。そんなことを改めて噛み締める観劇は久しぶりでした。

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    2024/04/04 01:36

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