ナマリの銅像 公演情報 劇団身体ゲンゴロウ「ナマリの銅像」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    「イメージの飛躍が際立つ歴史劇」

     2022年初演の劇団代表作の再演である。私は最終日のAキャストを鑑賞した。

    ネタバレBOX

     圧政に苦しむ島原の少年益田四郎(初鹿野海雄)は内気で人付き合いがうまくない。友人のハチ(小林かのん)とともにほかの少年たちのからかいの対象となっている。彼らがバイトしているパチンコ店では年貢を納められない百姓たちや、パチンコ玉を拾い陰で銅像を造って売っているナマリ(山﨑紗羅)らがたむろしているのだった。ある日声が出なくなった店長(越智愛)にけしかけられて四郎が客寄せのマイクパフォーマンスをすると皆は一気に惹きつけられる。

     四郎の隠れた才能に目をつけた山田(四家祐志)は一揆軍に加わらないかと誘う。手品の仕掛けに四郎の見事なアジテーションも相まって、山田は四郎を神の子として皆に認めさせることに成功する。こうして一揆軍は原城に籠もり叛乱を続けるのだが……

     私が面白いと感じたのは天草四郎が創られた神であったという取材をもとにさまざまなイメージを作中に展開させた点である。一攫千金を狙う農民たちがパチンコ店に詰めかけ、それをまた搾取する店長という構造を圧政に苦しむ農民に重ねたり、ナマリが銅像を造って売るという行為に四郎の崇拝化を重ねるなど、穏当な歴史劇にしなかった点が面白い。

     しかしこのイメージの豊富さとは裏腹に作劇自体はもう一捻り必要と感じた。一杯飾りのシンプルな舞台にもかかわらず場所の設定がたびたび変わり、一部の俳優が何役か兼ねるため、いま一体何を観ているのかわからなくなっていく事態が頻発した。山田が代官と通じているというのも平板であったし、そのため窮地に追い詰められた四郎の絶望や、神を失いかけた一揆軍の疲弊がまざまざと伝わってこなかったのが残念である。

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    2024/04/03 18:42

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