日常茶飯事 公演情報 スミイ企画「日常茶飯事」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    実験的パフォーマンス?
    みささんがお書きになっているように、私も演劇というよりはパフォーマンスのジャンルだと思った。佐々木透さんの作品を読んでいないので、正直、この劇で演出家の澄井さんが何を言わんとしているのか、自分にはよくわからなかった(言葉を知るために、あとで台本を買うべきだったかな)。
    これを演じた俳優さんは、身体的にも精神的にも大変だったろうなと思った。どうやって演出家の意図を自分の中で肉化し、表現しようとしたのだろう、ということのほうに興味がある。青年団での若手自主企画デビュー作に澄井さんがなぜこれを考えたのかも、知りたいところだ。
    上演時間1時間5分。「頭で理解するというよりは、観た人個々に感じてもらう」といった一種の実験劇みたいで、プレビュー的なものに思え、有料公演に適しているとは思えなかった。それだけにPPTがあればよかったと思う。

    ネタバレBOX

    うーん。どのように感想を書いたらよいのだろう、と会場のアンケートを手に迷った。劇が終わると、首をひねって苦笑して去る人が視界に入った。ほとんどの人はアンケートを書かず、出て行った。そんな中で、私の連れは最後まで1人会場に残って熱心にアンケートに感想を書いていた。その内容は知らないが、いろいろ感じることがあったらしい。「後半から面白くなった」そうだ。
    3人の女優が、あるときはひとりごと、あるときは会話らしき、とりとめのないことをつぶやきながらさまざまなポーズをとっていく。
    衣裳は宇田川千珠子、木引優子が、共に上はラインストーンを散りばめたグレーのカットソー、下は宇田川が緑のレギンスに緑と白のストライプのバイアス仕立てのミニのラップスカート、木引が青のレギンスに、宇田川と色違いの青×白のスカートをはいている。鈴木智香子は、黒のカットソーとレギンスに赤と白のストライプのロングのラップスカート。最後に、宇田川、木引がラップスカートを脱ぎ、鈴木の頭から襟飾りのように掛ける。宇田川、木引はレギンスの上にショートパンツをはいている。これらの衣裳が広告美術のようで、なかなか可愛く、ファッションの視覚的要素の占める割合が大きく思えた。
    木引が自分のラップスカートの中に宇田川の頭を隠したまま長い台詞をつぶやいたり、鈴木は倒立を披露したり、黒のマットに簀巻きにされて舞台の隅に転がされ、そこから1人で脱出したりする。ただ、それがどういう意図なのか見ていてまったくわからない。
    澄井の演劇活動は大学時代からずっと観てきた。「言葉と身体の融合パフォーマンス」というのは、以前所属していた害獣芝居時代、澄井自身も女優として演じている。今年の春に、害獣芝居で浅沼ゆりあも久々に実験劇風パフォーマンスを発表していたが、澄井もこの方向が好きなのかもしれない。
    本作で女優の発する言葉を聞いていると、澄井のブログの文章のテンポとどこか共通性があると思った。彼女の文章は、日常の出来事を書いていても、どこか浮遊感があって、読んでいて「なるほどね」みたいに容易に共感できないところがあるのだ。
    パンフの挨拶文に「それぞれ個々人がちょっとした希望と絶望を抱えて毎日毎日、海に逃げ込む前のたいやき君さながらやっていっているところに、演劇を差し込める余地があるんじゃないか」と書いてあり、何となくわかるようなわからないような(笑)。終演後、「よく理解できなかった」と澄井本人に伝えると、「あれは水の中、水面下で起こっていることなので・・・」という言葉が返ってきた。「水の中でしゃべっているという意味?」「そうです」。もっと質問したかったが、ほかのお客さんもいたので遠慮した。すると、あの3人の女性は「海に逃げ込んだ後のたいやき君」ということなのだろうか。
    澄井はすぐ次に利賀での演劇コンクール参加が控えているようだ。今後も彼女の演劇活動を見守っていきたいと思う。

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    2010/08/01 11:41

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