ナマリの銅像 公演情報 劇団身体ゲンゴロウ「ナマリの銅像」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    タイトルにある「銅像」は虚像を表し、「立場が人を作る」といったことを思わせる。気弱で自分の意思をハッキリ伝えられないような青年が、いつの間にか神に祀り上げられ 島原の乱の指導者になってしまう。本人の戸惑い、困惑とその言動に振り回される人々の悲哀を史実に絡めて描く。

    舞台という虚構性の中に社会性と人間性の両面、さらに過去と現代を繋げる、そんな輻輳する作品。表層的には、江戸時代初期に起こった一揆という社会ドラマ、それに否応なく関わることになった人々の人間ドラマを交錯させた描き方だ。しかし、一揆の概要を観せるだけで、敢えて深堀しなかったようにも思える。むしろ島原の乱と太平洋戦争を絡めた不条理劇が立ち上がる。人の意思など時代の趨勢に飲み込まれ、否応なしに破滅の道へ…。

    公演の見所は、人間の弱さとエゴが 事態を悪化させ、取り返しのつかない状況へ追い込んでいく。その過程をテンポよく観せ、どのように物語を収斂させるのか といった興味を惹かせるところ。総じて若いキャストのキビキビとした動き、その躍動感あふれる演技が熱演のように思える。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)【Bチーム】
    2024.4.2追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、数枚(個)の平板と箱馬を変形させ情景を作り出す。基本は和装、武器は棒を刀に見立てるなどシンプルなもの。
    特に島原の乱と太平洋戦争を思わせるシーンは迫力がある。乱の場面は、天草四郎=神格化された青年が箱馬の上から拡声器を使って煽るような言葉を浴びせる。戦争の場面は、暗闇の中でLEDライトを点滅させ、閃光と爆撃といった照明・音響で迫力・緊迫感を出す。

    物語はパチンコバイト青年・益田は店内でマイクパフォーマンスで客に金を使わせる。その煽るような口調を買われて、島原の乱 の指導者へ。信念なき指導者の下、一揆を加速させる仲間たち。しかし、史実にある通り 劣勢になり鎮圧寸前の状況になっても、戦うことを止めない。虚像に踊らされた多くの犠牲者…農民もいればキリシタン信徒、その翻弄された人々の姿こそが怖い。

    一方、益田を神に祀り上げた人々は、信じたふりをする。誰も指導者=責任者になりたくはない。翻って自分で考えることをせず、誰かに責任を押し付ける。そんな人の弱さエゴが浮き彫りになる、と同時に為政者という立場の思惑を描く。いつの時代も変わらぬ<人間の姿>を描いた群像劇。

    音響・音楽は銃撃といった効果音、宗教音楽、そしてピアノを奏で優しい雰囲気を作り出す。先に記したLEDライトの点滅など効果的な工夫をするなど、演出にも工夫を凝らし好感が持てる。ただ過去と現在なのか、その立ち位置(時代感覚)、世界観の違いが曖昧に思える。それが妙と言われればそれまでだが、やはり物語の流れがしっくりこない といった印象だ。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2024/03/31 20:55

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大