実演鑑賞
満足度★★★★
終盤が強烈すぎて一気に感情を持っていかれた。ああ、これは名作だわ。宮崎駿の『風立ちぬ』の強さを想い起こす。
ロビーに飾られた祝い花、主演女優・石森咲妃さんが目立つ。やっぱり見てる人は見てるんだな。彼女の実力がきっちり評価されている。
そしてW主演女優の元AKB、清水麻璃亜さんがまた凄い。彼女とは知らずに岩田華怜か?なんて観ていたが、休憩で知って驚いた。TEAM-ODACや五反田タイガーでよく観てはいたがここまできっちりとした女優になっているとは。彼女を推して来たファン達は誇っていいと思う。文句の付けようがない主演女優だった。人一倍努力を重ねてきたんだろう。
この石森&清水ペアのバランスが美しい。学年は違えど歳は同じ。貧農出の劣等感丸出し文学少女と由緒正しき士族のエリートお嬢様。二人の関係性が物語の軸、ラストの畳み掛けには誰もが泣かされる。
1911年(明治44年)、平塚らいてうが婦人月刊誌『青鞜』を創刊。1890年に公布された集会及政社法によって女性は政治参加を禁じられていた時代。そこに女性の権利獲得運動を呼び掛けたらいてうの言葉は世の女性に大変な衝撃を与えた。
愛知県の教員養成学校女子部の寄宿舎にもその衝撃は伝わっていた。勉強運動ルックス、全てに秀でた由緒ある家柄の清水麻璃亜さんは学校中の人気者。誰しも憧れる存在。慕われる教師、篠田美沙子さんは授業に『青鞜』を用いるなど進歩的な思想の持主で校長に目を付けられていた。二学年下の飛行機にやたら興奮する石森咲妃さんは清水麻璃亜さんと親しくなるチャンスを伺っている。その清水麻璃亜さんは新任教師の久下恭平氏のことが気になってしょうがない。禁止されている田山花袋の『蒲団』や『青鞜』を極秘に借り受け、皆で隠れ読む。そのうち、自分達も秘密裏に回覧雑誌「バード・ウィメン」を作ることを計画。表立っては言えない本当のことをありのままに表現することへの渇望。
久下恭平氏、篠田美沙子さん、期待通りの名演。篠田美沙子さんは痛切な役柄。夢と現実、そのどちらをも知るリアルな言説。理想だけで生きていける甘い世界じゃないんだ。
ヒール教師の青山雅士氏が入江慎也みたいで不快な憎まれ役を好演。
上之薗理奈さんも印象的なシーンを残した。
寄宿舎の舎監教師、華岡なほみさんも流石に巧い。
独り、一年生で踏ん張る才媛、凪子さんも良かった。
明治時代の『ぼくらの七日間戦争』、是非観に行って頂きたい。