実演鑑賞
満足度★★★★
ま、すごいものである。ギリシャ劇を日本マンガが世界を席巻する時代にあわせて、見せてくれたようなものである。進撃の巨人もあれば、ジブリ風もちゃんとある。あれよあれよとみている内に二時間たって、アンコールになって、さて、この芝居アンコールに出てきた兄弟を演じた二人(井上芳雄、南沢奈央)以外あまりなじみのない全部で五人しか出ていなかったっけ、と頬をつねってみたくなる。それほど、スケール感がある。ギリシャ演劇を現代的に見せてくれたことでは驚異の舞台である。9000円安い。平土間満席。
切り絵マンガ風な美術を天井の高いこの劇場一杯に作ったのも成功している。海だろうが、宮殿だろうが、みな、そこでやってしまっているのに貧乏くささがない。音楽も上手く使っているし、役者の衣装も黒白と地味にまとめていながら小洒落ている。
メディアはよく知られているから少しは基礎知識はあるが「イアソン」の方は知らない。なんだか、シェイクスピアのペリクリースみたいな話だなぁと思っている内に終わってしまった。この舞台、ちょっと話がわかりにくいのが残念なところである。折角、語り手の役もあるのに、もう少し状況を解りやすく説明しても良いと思った。前半と後半と人物位置が変わるところがよくわからなかった。フジノサツコ脚本による古典は、面白いと感じたところは何でも入れてしまう癖があって、「怪談牡丹灯籠」などは成功したが、これはギリシャ劇だもんなぁ。予習をすればもっと面白かったろうと残念。前半の展開がわかりにくく、怪獣大暴れの中断に至るまでは周囲のファン女性は結構お休みの方が多かった。彼女たちはお話しかと解らなかったに違いないがそれでもご満足で引き上げていった。