イノセント・ピープル 公演情報 CoRich舞台芸術!プロデュース「イノセント・ピープル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2回目。
    観方を全く変えて観ると作家の意図が判り、かなり違って見えた。演出演技、細かい部分もかなりアレンジされていてラストの音も違う。話を知っているので人物の細かい目配せや表情の変化の意味が理解出来たことも大きい。
    これは原爆ではなく、夫婦の物語なのだろう。

    海軍の准将まで出世した内田健介氏の役が効いている。彼の叫びがあってこそ、こういう話は成立する。
    山口馬木也氏は老いの演技が素晴らしい。家族への涙が美しい。
    全員メイクをせずにそのままで老け演技をするのが効果的。

    ネタバレBOX

    主人公ブライアン(山口馬木也氏)は一目惚れのように初対面からジェシカ(川田希さん)に夢中だ。彼女以外目に入らない。どうせ死ぬなら独り寂しく消えるより、君といたいと願う。孤独で不条理な死と毎日向き合って作業している男にとって、一筋の光のような女。トリニティ実験は成功し、窒素原子核同士の核融合反応の熱核暴走は起きなかった。地球は無事だった。そして広島に投下が成功。これで戦争は終わる。皆の苦労は報われた。戦争が終わったら結婚しよう。

    この夫婦の物語として観ると、時間軸のシャッフルにも納得いった。男にとっては妻が全てだった。彼女こそ生きる意味。妻の死後、彼女が出た番組のビデオを一人観る。このシーンが堪らなく良い。照明が秀逸。

    ラスト、被爆者に謝罪を求められても何も言えない。何も言う言葉がない。だが娘の遺した孫娘が身籠っていることを知るとよろよろと立ち上がる。自分と妻の物語がまだ続いていることを知る。

    仮面を外した小日向春平氏により、原民喜の詩が朗読される。

    コレガ人間ナノデス
    原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ
    肉体ガ恐ロシク膨脹シ
    男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル
    オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ
    爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ
    「助ケテ下サイ」
    ト カ細イ 静カナ言葉
    コレガ コレガ人間ナノデス
    人間ノ顔ナノデス

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    2024/03/24 18:26

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