実演鑑賞
満足度★★★
音曲師・桂小すみ(こすみ)さんが上手に座り、三味線を叩き長唄を唸る。各種の効果音を作り、鉦や太鼓を打ち笛やケーナを吹き、時にはグリーンスリーヴスを奏でる。
今作はアルベール・カミュの母親の物語。
「私は正義を信ずる。しかし正義より前に私の母を守るであろう。」とはカミュがノーベル文学賞を受賞した後の討論会で述べた有名な言葉。
母、カトリーヌ・サンテスは文盲で難聴の為、耳が殆ど聴こえなかった。この役を演ずる數見陽子(かずみあきこ)さんはろう者(聴覚障害者)の為、観客にもろう者が大勢いた。ほぼ台詞のないマイムの無言劇。(手話で会話するシーンが一つだけあり、そこだけ音声が流れる)。
自分が観ていてハッと思ったのが、これは音楽の視覚化をやろうとしているのではないか。動きや表情、リズムや各種多彩な遊び。これはメロディーを見せているのではないか。
北アフリカのアルジェリアのノートルダムダフリックをイメージしたような背景。
「一人の母親の素晴らしい沈黙と、この沈黙に釣合う愛や正義を見出すための一人の男の努力」。
是非観に行って頂きたい。