廃墟ブーム 公演情報 サイバー∴サイコロジック「廃墟ブーム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    デカイんだか小さいんだかよくわからないスケール感が絶妙。
    タイトル通り『廃墟』ベースに物語は進んでいくものの取り立てて廃墟である必然性はあるようなないような・・・笑。
    コレ、前から一度やってみたかったんだよね!なネタをまるごと全部詰め込んで無理矢理ひとつにまとめたような強引さは否めないけれども、そういうのも含めてしれっと笑いに転換させること請け合いで、終始ニヤニヤしっ放しだった。
    ある時を境にこれまでの狭小世界がアッと驚く大胆不敵のワールドワイドなスケール感へと変貌させる様はやっぱり強引だったけれども、アリかなしかでいったら全然アリ。
    くだけた笑いのなかから相反するメッセージ性を打ち出す手腕はお見事。
    かぶり物系の笑いとかお化け屋敷とか、そういうジャンクなモノを笑って楽しめる方に是非お勧めしたいですね。

    ネタバレBOX

    当パンの挨拶文に『場所も相変わらず富山県葉暮町です。』と書いてある。
    どうやら事件は毎度、富山県葉暮町で起こるらしい。些細なことだが、こういう郷土性はいいとおもう。

    舞台はおなじみ(?)の富山県葉暮町にある現在は廃墟と化した建物。
    ここでは漁師を辞めた亡き父が、ある夢を追っていたらしい。
    その秘密を探るためにトモダチの士度と悠理をつれてやってきた娘の岬。

    この3人がル・デコのドアを開けて入ってくるところから本編がはじまるのだが、会場全体が建物の設定となっており、開演すると共に場内が真っ暗になり、懐中電灯一つでやってきて、客席にライトを向けたりなんか向けたりしながら部屋のスイッチを探り当てるまで視界が遮断される状態が続く。この演出はスリリングでいいとおもう。

    物語は亡き岬の父親の秘密をさぐる3人と、岬の父親が20年前に行っていたことをクロスオーヴァーさせながら描いていく。

    現在と過去が交錯する話というのはさほど珍しくはないが、岬の父親の夢を実現するために雇われた工学博士、派遣社員、および岬の父親らが秘密をさぐる3人の進行具合にあわせてその都度登場するのは、彼らが客席に配置されていることも相まって臨場感があり楽しめた。

    中盤までは場内のあらゆる場所に仕掛けられた小道具を弄びながら笑わせる物ボケ笑いが中心で、おまけに話の進行具合も足踏み状態で、せめてももう少し笑いのヴァリエーションがあればいいのになぁ、なんて思いながら観ていたのだけれども後半、中国の水爆実験による海水汚染のためにほたるイカがめっきり獲れなくなってしまったことを腹いせに核爆弾の開発を父親が雇った工学博士がオーヴァーテクノロジーによって蘇らせたアインシュタインと共にはじめたということが亡き父親の描いた夢の真相であることが明かされてからはこれまでのおちゃらけたムードが一転し、物語を畳みかけるスピード感はお見事だった。

    しかし水爆実験のくだりの辺りから、スタンリー・キューブリックの『博士の異常な愛情』を彷彿とさせるような話の流れだな、まさかラストシーンがキノコ雲なんてことはないだろうね?なんておもっていた矢先、キノコ雲のオブジェがしれっと登場したのには、笑った。

    『地上の星』になぞらえてプロジェクトX風のエンディングに持って行くやり方に賛否両論があるみたいですが、個人的には賛成の意向で。

    9

    2010/07/30 17:06

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  • アキラさま

    >今回のこの舞台のことで言えば、ラストのあの造形に「不気味さ」だったり「違和感」だったりを感じるようにすることを「意図」していた(と思います)ので、私は「タブーを破った」とはあまり感じませんでした。
    「笑い」にしたりしないところが、やや(「やや」ですけど)好感が持てます。観客としては、ラストに笑いが来ると思っていたところに、冷や水を浴びせられた感じがしたと思います。
    それで、怖さとか嫌悪を再確認するというか、そういう演出だったと。また、「仕返し」の無意味さもそこにはあると思いますし。

    同感です。私も過剰に意識するあまり、「タブー視」が一人歩きするのはよくないと思っています。この作品については「タブーを破った」とは私も感じていません。単にお笑いにしてはいないからです。あのオブジェにはいろんな感じ方があっていいし、なかなか巧い出し方だと思いました。だから「バースデー・ケーキ」って書いたんですけど、重々しくならないまさにオブジェらしさがよかったんじゃないでしょうか。
    「少年口伝隊」はずいぶん以前に一度観て、鮮烈な印象があります。あれはおっしゃるとおり、「口伝」の形式でストレートに「核」を語っていますね。表現の自由は守られるべきだし、私も多様性があってよいのは当然だと思っています。

    2010/08/09 05:18

    きゃるさん

    その、何度かお書きになっている、ご主人が憤慨した学生演劇のほうは拝見してませんから、なんとも言えませんので、横に置きます。
    今回のこの舞台のことで言えば、ラストのあの造形に「不気味さ」だったり「違和感」だったりを感じるようにすることを「意図」していた(と思います)ので、私は「タブーを破った」とはあまり感じませんでした。
    「笑い」にしたりしないところが、やや(「やや」ですけど)好感が持てます。観客としては、ラストに笑いが来ると思っていたところに、冷や水を浴びせられた感じがしたと思います。
    それで、怖さとか嫌悪を再確認するというか、そういう演出だったと。また、「仕返し」の無意味さもそこにはあると思いますし。

    私は、極端に「タブー」とすることで、あまり語られることがなくなるほうが問題ではないかと思います。かといって、もちろん無神経に(あまり考えずに)、観客の神経を逆撫でするような表現にはしてほしくないという点は、同感です。

    ちなみに、この舞台の後、『少年口伝隊一九四五』を観たので、かなり複雑な気持ちになりました。こちらのほうは、間違いなく今後も語り継がれていく舞台なので、多くの人が観ることで、きちんとメッセージは後世に残っていくものと思います。

    2010/08/07 05:04

    アキラさま
    Hell-seeさま

    >また、非常にブラックな意味での、神経の逆撫で方で、イヤだなと思うことが、テーマだったりするような気がするのです。
    「仕返し」もあんな「兵器」もイヤだ、ということの再確認と言いますか。
    ですから、きゃるさん(を含め観客の多く)が不快に思われて当然のことを、あえて仕掛けてきた、ということではないでしょうか。

    このお芝居においてのキノコ雲については、微妙ながらわたしも「あり」だと解釈しています。アキラさまの書いておられることも、Hell-seeさまの言われる「時代によって原爆についての演劇表現も変化してよいのでは」というご意見も興味深く思うし、理解もできます。本作についてはテーマがはっきりとあり、自分には許容範囲の表現だったと思います。不愉快とまでは思いません。個人的には、の話ですが。
    ただ、先日、井上ひさしの「父と暮らせば」を観て、あれも原爆と父娘の話で、もちろん本作とは作品のタイプは異なりますが、やはり考えさせられました。原爆で亡くなった父親の霊が子ども向けの昔話語り「一寸法師」を原爆の残骸を使っておもしろく見せようとして、生き残った娘のおののきに思わず手を止め、「ヒロシマの人にとってはどんなことを言っても・・・」と肩を落とすところ、やはり私は共感しました。
    誤解のないように言葉でうまく表現できなくて困るのですが、私自身も被爆者ではないので直接の苦しみは受けてないわけでして、原爆の表現の緩和についても、記憶の風化によって「タブーでなくなる」ことには一抹の懸念はあるのです。「原爆も爆弾のひとつに過ぎない」という軽い感覚で捉えらえられるようになるのには抵抗感があります。先に例として挙げた学生演劇のお笑い表現にしても、私は劇中「原爆を指したのではなく、新型爆弾の威力を誇張したもの」と解釈してさほど目くじらを立てることではないと思えたのですが、家人の場合ははっきり「キノコ雲」のイラストに「冒涜の不快さ」を感じ取って「被爆への想像力の欠如だ。あそこで笑うなんてどうかしている」と涙ぐんで怒っていましたので、感じ方に個人差はあると思うのです。もちろん表現の自由はあるという前提ですが。

    2010/08/06 07:21

    Hell-seeさん

    >シュールであっけない終わり方だったら私の場合はちょっとガッカリしていたかもしれません・・・。

    うーん、確かにそれは言えますね(笑)。


    Hell-seeさん
    きゃるさん

    ラストの雲の件ですが、私もあれはアリだと思います。出さないで、音とか光だけでしたら、普通すぎた気がします。そうでなくて、あえて出して、観客が笑っていいのかどうか迷ってしまうあたりの空気が非常に良かったと思いました。
    無責任で無神経であっけらかんとした様子で、それを出してくるあたりの感覚が、今回のこの舞台ならではだと思うからです(好意的にとれば、そういう無神経さ無責任さを装って)。
    また、非常にブラックな意味での、神経の逆撫で方で、イヤだなと思うことが、テーマだったりするような気がするのです。
    「仕返し」もあんな「兵器」もイヤだ、ということの再確認と言いますか。
    ですから、きゃるさん(を含め観客の多く)が不快に思われて当然のことを、あえて仕掛けてきた、ということではないでしょうか。

    2010/08/05 14:22

    Hell-seeさま

    >シリアスに描くことが『戦争をテーマにした適切な表現方法』として世論では暗黙の了解とされているのは日本が敗戦国であることにも起因して、ユーモラスに社会風刺をする土壌が戦後、築かれにくい文化が形成されていったからなのかもしれませんけれど、伝わりやすく親しみやすくするために強烈なインパクトや、ブラックジョークな飛び道具だったりを取り入れることは実は、私は賛成でして、いつかはそのような表現方法も時代と共に受け入れられていく必要があるのではないかとおもうのです。
    今丁度その過渡期に差し掛かって来ているのではないかな、とこの公演をみてそんなことを感じました。

    なるほど。興味深いご意見ありがとうございました。「過渡期」、私も似たような思いで本作を観ていました。

    2010/08/04 17:03

    きゃるさま

    コメント頂きありがとうございます。お手間を取らせてしまい、恐縮です。

    >バースデー・ケーキを運んでるみたいに見えました。
    なるほど!その発想すてきですね。

    >あのハリボテ風きのこ雲は微妙なところでしたね。

    そうでしたか・・・。。
    戦争は終わっても被爆の後遺症に苦しむ方々がおられることをおもうと確かにあの表現は、倫理観的にも賭けだったのだろうとおもいます。

    シリアスに描くことが『戦争をテーマにした適切な表現方法』として世論では暗黙の了解とされているのは日本が敗戦国であることにも起因して、ユーモラスに社会風刺をする土壌が戦後、築かれにくい文化が形成されていったからなのかもしれませんけれど、伝わりやすく親しみやすくするために強烈なインパクトや、ブラックジョークな飛び道具だったりを取り入れることは実は、私は賛成でして、いつかはそのような表現方法も時代と共に受け入れられていく必要があるのではないかとおもうのです。
    今丁度その過渡期に差し掛かって来ているのではないかな、とこの公演をみてそんなことを感じました。

    2010/08/03 00:48

    Hell-see様

    公演終了したので、ネタバレにならないから書きますね(いったん書いて、マズイと思い、削除したんです)。

    >かぶり物系の笑いとかお化け屋敷とか、そういうジャンクなモノを笑って楽しめる方に是非お勧めしたいですね。

    ホームレスの人がきのこ雲のオブジェをテーブルに置く場面、どこかバースデー・ケーキを運んでるみたいに見えました。笑う場面じゃないから、皆さん「う!」って感じで見守ってましたけど。「きのこ雲」を具象化して出すのは、一般的にはけっこう神経を遣うようですね。昔観た学生演劇で、原爆ですべてが吹っ飛んで終わりというオチで、「きのこ雲」をお笑いテイストで表現した芝居があって、一緒に観た家人が「原爆をお笑いに使うなんて冒涜としか言いようがなく不愉快」と物凄く怒って、アンケートで抗議してました。
    このお芝居はお笑いにしたものではありませんでしたが、あのハリボテ風きのこ雲は微妙なところでしたね。

    2010/08/02 11:12

    アキラさま

    コメントありがとうございます!
    アキラさまのおっしゃる、強引さとデタラメさ、のようなモノわたしもいいとおもいました。
    要所要所で見受けられるけだるい感じとか、テキトーさ加減は、クドカンをっぽくしてるのかな、なんておもったりだったのでした。

    中島みゆきの件に関しては、アキラさまとは見事に対立してますね笑。
    あの曲がかかった時点でその後の展開はおおよそ見当がつきましたけども、観客が察することを狙っていたのかな、と。
    個人的には、地上の星のダンサンブルな前奏が流れ出した瞬間はキタ!って感じでテンションあがりましたけども。笑。
    シュールであっけない終わり方だったら私の場合はちょっとガッカリしていたかもしれません・・・。

    2010/07/31 23:51

    Hell-seeさん

    強引さとデタラメさが素敵でしたね(笑)。
    『地上の星』は、「ラストだけで十分だ派」です。私は(笑)。
    ラストの方向が「こうじゃないかな」というところへの、この曲ですから、先が読みやすくなってしまうと思ったのと、この部分だけ、やけに丁寧になぞっているな、というところからです。
    もっと、強引でデタラメで思いつきみたいな感じのほうが、ここのテイストにマッチしていたと思うのです。

    2010/07/31 08:09

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