いい旅、現実気分。 公演情報 人間嫌い「いい旅、現実気分。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。紀行番組「いい旅・夢気分」ならぬ 「現実気分。」というタイトル通り、あるあるといった現実感を伴う女子大生3人組の旅。まだ何者にもなれていない学生が、社会に出る前の浮遊というか不安を抱えた気持がしっかり伝わる。一方、女子大生より年上で社会人、しかもこの島に住んでいる女性たちの心情も浮き彫りにして、自分らしく「生きるとは?」を問うような物語。

    旅先は、当日パンフに作・演出で主宰の岩井美菜子 女史が「五島列島の福江島をイメージ」とあるが、劇中では長崎県にある仮想の離島「ツバキ島」、そこにあるゲストハウス「カメリア」が舞台。有名な観光名所、美味しい料理がある訳でもないが、この地味な島なら自分達らしさ、目立つことが出来るのではないか、そんな承認欲求がいじらしい。

    一方、島に住んでいる 若しくは 移住してきた女性たちは、都会では受け入れてもらえないといった挫折感を味わったが、今では自分らしくマイペースで生活している。都会に比べ利便や刺激といったことはないが、それでも「住めば都」といった気持が芽生えているよう。都会から来た女子大生と交流しているうちに、自ずと実感もしくは納得させているような顧(省)みる姿がリアル。

    若い女性の本音が炸裂しているかのような内容。動作や台詞は それほど過激ではないが、心のうちにある思いが重く 苦しく、それでいて”今のままではいけない”、といった激情が溢れ出ているような。この離島と東京の二拠点で最先端ビジネスを営む女社長、大恋愛の末 この島に住み着いた女性、島の生活を満喫する女性やドロップアウトした女性など、様々な背景を持つ女性たちを登場させ、多様性ある生き方を模索し 表出させた女性版青春物語。

    また日替わりゲストの唯一の男性キャスト<アバンチュールマー君>の存在も面白く、自分が観た回では爆笑が…。カッコいいが、なぜモテないのかが一瞬にして解る。女性と男性のちょっとした思い、その気持のすれ違いが実に上手く表現されていた。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、場内奥のコーナーにクッション、中央に丸テーブルにBOXクッション。本棚や観葉植物、窓や柱には蔦が絡む。エッジングガラス風ライトがミラーボールのような光を放つ。シンプルだが、スタイリッシュなイメージだ。

    大学3年生の女性3人組が、ちょっとしたアバンチュールを楽しむといった物語を想像していたが、心の襞を撫でるような奥深さがある話。旅先は沖縄といったリゾートではなく、あえて長崎県の離島を選び、自分たちの存在を目立たせようと目論むが…。しかし 会話からは、給料も福利厚生もそこそこの会社に就職出来れば、などと妥協する姿がリアル。

    一方、島に住んでいる女性は、都会での生活に疲れ、心に何らかの痛みを抱えているよう。必ずしも島の暮らしがハッピーとは言えないようだ。
    女子大生たちと 島の女性が交流(女子会)をすることで、夫々の現状を再確認する。旅は、普段の暮らしから離れ浮き浮きとした気持にさせるが、この公演では 旅先に日常を持ち込み、単なる旅情気分に浸らせないところが妙。

    全編 波の音、星空を思わせる照明など、舞台技術での雰囲気作りが巧い。総じて若いキャストの演技は等身大・自然体のようで 観ていて楽しい。リアルな女性の本音が聞かれたような心持がした。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2024/03/16 15:52

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大