実演鑑賞
満足度★★★★★
友人に誘われたまたま見に行った作品でここまで圧倒されると思わなかった。
この作品を取り上げるセンスと上演を実行に移す力、圧倒的な台詞量とアップダウンの激しい会話劇を2時間弱走り抜ける俳優の技量と熱量、難解な海外戯曲を形にする演出力、全てに脱帽だった。
この作品が伝えようとしていることをどれだけ理解できていたか、すべてを理解できたとは到底思えないが、二人の関係性が変化していく様、互いをケアしながら生き延びようとする姿は愛おしく切なかった。私自身トランスジェンダーであり、また長期入院している精神障害者の支援に携わっているため、他人事には思えないということもある。なにが「異常」「犯罪」かは社会の趨勢で変わる。しかし、私たちはいつでも、ここに、たとえ隔絶され、差別され、忘れ去られようと、ここに生きている、生きようとしている、と。
しかし、とにかく演技や演出、舞台美術や照明が素晴らしかったため、ここまで強烈な印象を残しているのだと思う。感激から3日経った今日でも二人の姿を思い出しては胸が痛む。エアスイミングのシーンや二人のダンスパーティのシーンでは切なくて涙が流れたし、翻訳の戯曲だが笑わせるところは演技力や台詞の機微で客席から笑いが何度も漏れていた。
何度も見たい、もう一度見たいと思わせてくれる作品だった。