柏原照観展 公演情報 牡丹茶房「柏原照観展」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    流石に面白い。舞台上は展示室になっており、数々の仏画が並べられている。(エアブラシ・アートなのが時代背景と合わず気になるが···)。中央に置かれた台座。
    画家柏原照観(山本佳希氏)の大ファンである資産家(越路隆之氏)が道楽で運営する個人美術館。1954年(昭和29年)、柏原照観のアトリエで見初めた彫刻品を購入、それを展示することに。運ばれて来たそれは漆黒の消し炭で作られたような異形の禍々しいフォルム。何本も腕が突き出している奇形の阿修羅像。
    柏原照観の妻(赤猫座ちこさん)はその像の前で涙を零す。「本当は売りたくないんです。必ずお金を用意して買い戻しますから、決して誰にも売らないで下さい。」
    資産家の娘(小森かなさん)と結婚し、入婿となった次期当主(とのむらゆうだい氏)はそれを約束する。
    だが、しかし・・・。

    赤猫座ちこさんは増村保造顔。こういう暗い過去を背負った役がハマる。
    今作のような設定の閃きがこの作家のかけがえのない財産なのだと思う。

    ネタバレBOX

    ①1954年
    空襲で産んだばかりの赤子を黒焦げにされた戦争未亡人の赤猫座ちこさん。戦後ガード下で街娼をやりながら彫刻を彫り続ける。頭の中の赤子が肉体を求めている。彼(彼女)に相応しい彫刻が完成したら、もう一度魂は地上に戻って来る筈だと。そんな女に欲情した画家、柏原照観は家に連れ帰って娶る。柏原照観はもう描けなくなっていた。自分の中に仏が何処にもいなくなったのだ。狂気の彫刻を完成させる赤猫座ちこさん。頭の中の赤子がいろんな表情を求める。いろんな仕草を求める。ただ足だけは付けてあげなかった。何処にも行かせない。私のもとにずっと居るように。子守唄。

    ②1989年
    柏原照観の遺作となった阿修羅像はある時期一代ブームを呼ぶ。この彫刻に祈願すると子宝に恵まれるのだ。美術館を経営する嶺井戸一族の当主は遺書を残して自殺した。顧問弁護士(國枝大介氏)が相続会議を開く。妻(丸本陽子さん)、長女(二ツ森恵美さん)、次女(片渕真子さん)、三女(星野梨華さん)。同席する従姉妹(丸山夏歩さん)と潜入するフリーライター(吉成豊氏)。明かされる彫刻の秘密。異常に妊娠することに恐怖を覚えていた女達。会議の後、軽度の知的障害を持つ三女・星野梨華さんは妊娠していることを丸山夏歩さんに告げる。しかも性行為など全くしていないことを。そして口ずさむのは知らない子守唄。

    ③2024年
    もう美術館は閉館し、土地も建物も売り払ってしまうことに。最後の管理者、青木絵璃さんのもとに離島で暮らしていた嶺井戸一族の末裔が訪ねて来る。三女・星野梨華さんの娘である車椅子の池島はる香さんと恋人の辻󠄀響平氏。母は処女懐胎の娘を阿修羅像から遠ざける為、離島に籠もったのだ。阿修羅像は約束された肉体である池島はる香さんに到頭受肉することに成功。子守唄。

    ②の星野梨華さんが強烈。「黙れ!」
    ③の肉体を乗っ取られる池島はる香さんの葛藤。「違うよ。」

    子供を妊娠する恐怖、処女懐胎が混乱を招く。とにかくこの世に生まれ出る肉体を求める悪霊の話なのか。逆に一族は誰も子孫を残せない方がよかったのでは。彼(彼女)が現世に誕生するまでは、誰も妊娠出来ない方が。

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    2024/02/25 10:16

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