寉峯~カクホウ~ 公演情報 ラビット番長「寉峯~カクホウ~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    凄く色々な方法論を試していて、物語の語り口としては非常に評価したい。辻褄の合わない時空間を超えた語り手の移行は徹底すればかなり面白い成果を得たと思う。

    遠藤正己氏、駒師の雅号は寉峯(かくほう)。漆への拘りと盛り上げ将棋駒が特徴。駒は漆の塗り方で種類があり、「彫り駒」(文字の部分が凹んでいる)、「彫り埋め駒」(文字の部分が平ら)、「盛り上げ駒」(文字の部分が盛り上がっている)となる。
    現代の名人五名とされている駒師の一人、大澤富月(ふげつ)氏に師事。富士駒の会(静岡県富士宮市で富月氏が主宰している駒師育成会)に所属。
    2018年11月、第31期竜王戦(羽生善治竜王対広瀬章人八段)第三局にて寉峯の駒が選ばれる。将棋の駒は指して貰ってなんぼ。究極の高みに立つプロ棋士のタイトル戦に選ばれるということは全てが揃ったということ。この駒こそ、この対戦を飾るにふさわしいと。ボクシングの世界最高峰のタイトルマッチで選ばれるグローブのような崇高さ。人生を懸けるに値するとトップの面々を納得させる本物の重み。駒に「落ち着きがあり、見易く指し易い」と棋士達の評価は高い。
    59歳で駒師になり、僅か7年でここまで辿り着いた天才。現在の駒師の中で群を抜く人気の彼の人生を紐解く。

    最愛の妻と居酒屋を経営、順風満帆。44歳の時に妻が交通事故死。失意の中、店を畳む。仕事を転々とし、将棋サロン経営を思い立つ。良いものを揃えようと展示即売会に足を運ぶが将棋駒は非常に高価。手をこまねいていると「自分で作ることも出来ますよ。」と声を掛けられる。59歳にして、自分で将棋の駒を彫り出すことに。

    ネタバレBOX

    主人公に大川内延公(のぶひろ)氏。将棋はそこそこ強いがプロになれる程でもない。ミュージシャンで身を立てようと上京したものの、やはりそこそこ。大学時代に付き合った将棋サークルの恋人(北澤友梨枝さん)のことを未だに引きずっている。将棋を教えてくれた父親(松沢英明氏)が認知症で妹(江崎香澄さん)の介護も限界の為、実家に戻る。渡辺あつし氏の経営する地元の将棋サロンで寉峯こと、遠藤正己氏(西川智宏氏)を紹介される。

    遠藤正己氏は元々売れない歌手でホステスだった妻(清水美那さん)を口説いて結婚。将棋ファンの集まる居酒屋を開業、軌道に乗る。自慢の包丁使い。趣味の釣りで大河内氏の父親と知り合うことに。手作りの漆を塗ったウキ。全てのばら撒かれた欠片が後の伏線になる不思議。
    最愛の妻の死で全てが狂う。何も生きゆく意味を見失った彼は娘(鈴木彩愛さん)の事だけを考えて生き延びる。何も無くなった時に残るのは血の通った家族だけ。

    渡辺あつし氏の語る昔話で時空間が飛び、聞いていた大川内氏は回想世界に飛ばされる。一緒に観客も吹っ飛ばされるので面白い試み。

    遠藤正巳氏の物語と大川内延公氏の物語が並走。たまに渡辺あつし氏の物語も。

    キーになるのは認知症で徘徊を繰返す松沢英明氏。彼は何かを探し続けている。将棋を指したがるが、決まって「こんな駒じゃやれるか!」と怒り出す。彼がほんの少しの間、正気を取り戻すシーンが物語のクライマックス。

    大川内氏の作った曲は聴きたかった。ラストに流して欲しい。YOASOBIみたいのだったら面白かった。

    無理に将棋を絡めなくてもいい話だと思う。遠藤正己氏と鈴木彩愛さん父娘の物語、松沢英明氏と大川内延公氏父子の物語が共鳴し合ってシンフォニーを奏でるべき。互いの話が実は同じ話だと気が付くように。鈴木彩愛さんをもっと描き込むべき。そして何をやってもそこそこ止まりだった大川内氏の苦悩が欲しい。

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    2024/02/24 15:19

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  • ヴァンフルー様
    ご観劇いただきありがとうございました!
    ご感想もありがとうございます☺️

    2024/03/13 09:32

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