JUDY 公演情報 グーフィー&メリーゴーランド「JUDY」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    誠意のこもった力作
    太平洋戦争末期、限られた戦力をフル回転させて戦った帝国海軍・芙蓉部隊の男たちとそれを陰で守り支えた女たちの物語。
    資料を読み込みながら当時の隊員にも取材し、時代考証も専門家の協力を仰ぎ、誠意のこもった作品に仕上げている。今後も再演を重ねてほしい力作。
    今年もまた八月十五日がやってくるが、改めて戦争と平和について考えさせられた。若い人たちにぜひ観てもらいたい。

    ネタバレBOX

    徒に感傷を煽るのでなく、史実に真摯に向き合った作品という点で高く評価したい。
    それぞれの隊員の人間的葛藤を描く一方、勤労奉仕で隊員たちを支える女学生たちの純真な思いが胸を打つ。
    現代のロケ隊のエピソードを冒頭に入れ、責任やトラブル処理を部下のAD中島に押し付けて偉そうに指示するだけのディレクター坂田を描くことで、のちに物語の中心となる指揮官、新渡戸正造の責任感ある行動と対比させる。
    血筋からは大叔父に当たる元芙蓉部隊隊員の養父に育てられた中島徹が、養父の遺品を整理していてみつけたある女性からの手紙。養父は女性の手紙に対応する形で返事をしたためていたが、返事の手紙はなぜか出されることなく、養父の手元に残されていた。中島はその女性の消息が知れないものかと思い、祖母が勤労動員女学生だったという地元スタッフの菅野に相談する。
    海軍に入隊した川嶋隆晴と女学生、井上良子は川嶋の出征により、離れ離れに。良子は台湾の地で前線で戦う川嶋のことを守りたいと誓う。
    軍中央が特攻を主張する中、芙蓉部隊の指揮官、新渡戸は自らの信念を曲げず、正攻法の夜間攻撃を繰り返し行っていた。芙蓉部隊は藤枝(静岡)、鹿屋(鹿児島)、岩川(鹿児島)と最前基地を次々と移動させて戦っていく。鹿屋から岩川へと基地の隊員たちの身の回りの世話を手伝う女学生たちの存在が男所帯の隊員たちの心の慰めになっていた。良子へ手紙を書いている川嶋を軟弱と蔑み、つらく当たる佐藤も、死への恐怖をヒロポンや酒で紛らわしていた。川嶋は佐藤に体を蝕むヒロポンをやめると約束してほしいと頼む。ヒロポンの禁断症状に苦しみ、前線から一時離れた佐藤も、戦況が苛烈さを増すなか、意を決して最期の決戦に出撃する。空中戦のさなか、操縦桿を握りながら互いの声を思い出す川嶋と佐藤。酒に酔った佐藤に手篭めにされそうになったところを隊員中島武明に助けられた女学生上村俊子は、互いにほのかな恋心をもつ。そして、終戦。中島との別れ際、実家が農家の俊子は「いっぱいひまわりの花を植えます」とだけ伝える。「上村さんの子孫がみつかった」という菅野の知らせで中島徹が向かった先には、ひまわりの花束を抱えた俊子そっくりの少女が立っていた。
    以前、テレビ番組のインタビューにおいて「どんな思いで死地に向かったのか」というジャ-ナリストの質問に、特攻隊や芙蓉隊の生き残りの元兵士たちは「戦争の是非よりも、身近な家族や自分の大切な人たちの顔を思い浮べ、守りたい一心でした」と異口同音に語るのを聴いたことがある。私は日本を二度とそういう状態にしないために自分の立場でできることを日ごろも考え、たとえ些細なことでも行動することを心がけている。しかし、いまも世界のあちいこちで戦争が行われ、一般市民が空爆で殺されたり、化学兵器の後遺症に苦しんでいることも忘れてはいけないと思っている。
    ふだん言い馴れない台詞が多いせいか、言い間違いもしばしばで、時にはまったく逆の台詞を言ってしまう人も。軍人の役は特に滑舌のよさが必要だと思うがモゴモゴしゃべっている役者も。劇中、兵士が「ぶっちゃけ」という台詞を言うのが現代に引き戻されたようで気になった。キムタクではあるまいし(笑)。
    座学の場面が多いため、多少単調さを感じた。
    パンフレットには役名だけが列記され、別欄に役者へのインタビュー写真が載っているが、劇団初見の人のために配役表を載せてほしかった。
       

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    2010/07/24 08:26

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