小栗判官と照手姫 公演情報 Project Nyx「小栗判官と照手姫」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    美女揃いの艶やかな舞台。受付から綺麗所ばかり。
    思い出すのは2018年2月、metroで演った月船さららさん主演『衣衣 KINUGINU』。泉鏡花の短篇と古浄瑠璃の『一心二河白道(いっしんにがびゃくどう)』をアレンジした傑作。余りに素晴らしくて2回観に行った。自分は仏教説話が好きなんだな、とつくづく思い知った。

    今作も説経節『小栗判官』を底本に因業渦巻く伝奇浪漫。
    津軽三味線をエレキギターのように搔き鳴らす駒田早代(さよ)さんの登場から最高だ。見事な説経節を唸り語り唄うのは河西茉祐(まゆ)さん。この二人こそが今作の主人公に思えた。
    更に百鬼ゆめひなさんは等身大の照手姫人形を一人出遣いで舞わしてみせる。
    幕が開けば打って変わって絢爛豪華できらびやかな女優達が舞うオープニングに。片岡自動車工業の『お局ちゃん御用心!!!』にも似たエンタメ振り。

    下手の黒い壁に歌詞や口上が字幕で投映されることが素晴らしい。これはこの手の作品には絶対あったほうが良い。作品への没入度が変わってくる。これが無かったらぼんやり観ていた気がする。

    ヒロインの森岡朋奈さんは宝生舞系の美人。美声で歌が映える。
    手塚日菜子さんはハマカワフミエさんっぽかった。
    月岡ゆめさんはちゅりっぽい。
    浜田えり子さんは松原千明似の美人。
    山田のぞみさんと本間美彩(みさ)さん兄弟が印象に残る。

    妖怪人間ベロの正体に似た餓鬼阿弥の造形が最高。演じる者は一体誰なんだ?
    『ロード・オブ・ザ・リング』のハワード・ショアっぽい劇伴。
    想像以上に面白かった。

    ネタバレBOX

    第二幕にていよいよ登場ののぐち和美さんは劇団☆新感線なんかの大御所悪役の存在感。『ジェダイの帰還』のガモーリアンを思わせる兇悪な風貌とやたら通る美声がヴィランとしてキャラ立ち。往年の角川伝奇映画の魅力、素晴らしい。やっぱり悪党が映える。
    小谷佳加(よしか)さんは毎回コロッケのような芸達者な役で観客席を温めてくれる。
    寺田結美さんは宝塚調の美男子振り。

    自分が興醒めしたのは第二幕の音楽の使い方。久石譲や坂本龍一っぽい感動的な曲が押し付けがましい。「はい、ここ感動するところ」的な雑なやり方が好きじゃない。
    寺田結実さんと水嶋カンナさんが歌う歌謡ロックも好みじゃない。
    ラスト、河西茉祐さんが歌うボカロ曲みたいなのも駄目だった。ここは好みなのでしょうがないが、ひたすら暗い曲で攻めた方がリアル。

    餓鬼阿弥が小栗判官に早変わりするシーンは驚いた。
    「私は自分の罪をずっと考えていたのだが・・・、人は誰も罪なぞない!阿弥陀如来様が全ての衆生をお救いになられたのだ。さあ先へ進むぞ!」
    百鬼ゆめひなさんが照手姫人形の着物をはだけると、赤い糸で結ばれた無数の小さな人形がゆらゆらぶら下がっている。人の中にこそ無限の宇宙が広がっているのか。

    ラストは自分ならBUCK-TICKの『見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ』(ALBUM VERSION)を掛けたいな、と思って観ていた。すると水嶋カンナさんが来年は『新雪之丞変化』の再演を演ると言う。作品中にはB−Tの曲がガンガン掛かるらしい。櫻井敦司氏の追悼も込めるとのこと。ちょっと驚いた。

    室町時代前期、現在の茨城県筑西(ちくせい)市に城を構えていた小栗氏。その地を治めていたのは、室町幕府の出先機関・鎌倉府の長官、足利持氏(もちうじ)だった。1415年、関東で上杉禅秀が謀反を起こすも幕府軍の反撃に遭い敗れる。この時小栗満重も禅秀に与した為、所領の一部を没収される。それを恨み1422年大規模な反乱を起こすも(「小栗満重の乱」)、翌年幕府軍に鎮圧され自害した。
    だが実は小栗満重は死なず、現在の神奈川県の横山大膳を頼って落ち延びた、というのが「小栗判官伝説」。
    この時、横山大膳の娘の照手姫と恋仲になる。だが横山大膳は小栗満重の首を幕府に差し出して褒賞を得ようと、宴の席で家臣諸共毒殺する。
    地獄に堕ちた小栗満重だったが家臣達の嘆願により閻魔大王は温情を与え、餓鬼阿弥の姿で現世に戻される。夢の御告げを受けた遊行寺の大空上人は土車に餓鬼阿弥を乗せ、「この者を一引きひけば千僧供養、二引きひいたは万僧供養」と札にしたため、熊野の湯の峰を目指させる。通り掛かった信心深き者達が「えいさらえい!」と土車に括られた縄を引いてくれるのをひたすら待つ他力本願。
    現在の和歌山県田辺市にある湯の峰温泉。約1800年前に発見されたという日本最古の温泉。平安時代後期、浄土教の阿弥陀信仰の広がりとともに熊野の地は浄土と重ねられた。

    「鎌倉大草紙」「説経節」「浄瑠璃義太夫節」「歌舞伎」と全部バリエーションが違う。満重の息子、小栗助重が主人公だったりもする。
    神奈川県藤沢市や相模原市、和歌山県など各地に残る伝説。

    0

    2024/02/14 16:23

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大