小栗判官と照手姫 公演情報 Project Nyx「小栗判官と照手姫」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    全く予定に入れていなかったが(土壇場で変わる予感はややあったが..)、空いた時間枠にちょうどハマったので観に行った。満席情報は無かったのだが指定席エリアは見た所補助席を除いて満席。最後の一つに自分が収まったかのよう。スズナリの最後列に座るのは多分初めてだ。位置も良かったのだろう、眼前からステージまで視界が開けるようで大変見やすかった。ピンと張り詰めた台詞劇は間近で見たいが金守珍演出の明快なエンタメステージは俯瞰で見るのは悪くないと発見。
    「さんせう太夫」に続く女歌舞伎もの第三弾という事だったが、前作に比べ今作はスッと入り込む所があった。前作は安寿と厨子王の姉弟が「悪者」によって母親と引き離されるが紆余曲折を経て遠い地で再会する物語(姉は亡くなっているが霊はそこに居て共に再会を喜んでいる図)。
    今作は曇りない心で惹かれ合った聡明な男女(小栗と照手)が引き離され、一方は殺されるも墓穴から出てこの世ならぬ姿、他方は夫の死に随行すべしとの令に本人は従うも入水の際、同行した兄弟の義心により助けられ、人買いに売られる運命ながらしぶとく生き延びる。この二人が様々あって最後には再会を果たすという、ファンタジックなお話。
    昔のお話は結末が決まっていてそこに至るまで障害を乗り越えて結末に達するという構図、明確な不幸とそれを潜った末の幸福の対照は、色的にも単調だ。が、このシンプルさ、即ち一人を思い続ける事、信念を貫く事が現代においては稀少であるゆえに、艱難に打ち克って思いを遂げる結末に胸を突かれる。
    熊野へ達すれば男は元の姿を得る事を観客は知っており、その日は何時来るのかと成り行きを見守る。二人が全く別々の道を辿り、互いをそうと知らず(一方は自分の記憶も無い訳だが)同道する事となっても、困難は降りかかり、故あって生じる障害に阻まれる。そうしていつしか熊野に至った頃には男は連れ添う謎の女と離れがたい心持ちとなり、目的地への到着が恨めしい。女の方はこの世に残されながら仕える相手も居ない身を、せめてこの誰にも顧みられない腐臭漂う男の道行きを助ける事で人に捧げようとしている。そうした心の内をどちらからともなく打ち明ける事となった時、既に熊野の地にあった男が元の姿に戻る。スペクタクル・マジックをここで使うか、という所であるが、最後尾からは、ここで涙を拭う観客の動きが見える。静けさの中に二人が元あったまぶしい姿への感涙は年齢の為せる技だろうか。「あとは言えない、二人は若い~♪」

    ネタバレBOX

    なお今回ふと観たくなった理由はチラシに元唐ゼミ(昨年辞めてしまった)禿恵の名前を見た事。唐ゼミでの主演姿しか見ていない彼女が俳優としてどう舞台に映るのかが気になって仕方なくなった。舞台では女買いという男男した役柄で、メイクでは判別できなかったが身も軽くこなしていた。

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    2024/02/11 08:56

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