実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/01/23 (火) 14:00
座席1階
ナベプロのDボーイズメンバー新木宏典ら俳優をお目当てに来ている女性が圧倒的に多いな、という客席だったが、シライケイタの脚本・演出はとてもおもしろい。人気俳優がお目当てでない人も十分に楽しめる名作だ。
まず、開演前。舞台手前に向かって傾斜した舞台がおおむね4つのパートに分かれてソファやテーブルなどが置かれている。この傾斜舞台が非常に新鮮。台本に沿った演出では特段、傾斜が生かされているという感じでもなかったが、まずは注目の的である。
物語は、新木が演じる自称・世の中を知らないバカな若い男が中年サラリーマンを呼び止めるところでスタートする。死んだ知人のアサミについて知りたいというのだ。この無礼な若い男と、上から目線の中年男のバトルトークのような会話劇がまず、おもしろい。当初は説教を垂れるような調子の中年男だったが、話を重ねるうちに形勢が逆転。アサミを知りたいという話だったのにいつのまにか自分のことばかり弁解しまくる中年男。区切りとなる決めぜりふが、タイトルにもなっている「死ねばいいのに」だ。
アサミの母親や自宅マンションの隣人女性など、アサミに関係のある6人をこの若い男が「アサミのことを知りたい」と次々と訪ねていくオムニバスのような感じで進んでいく。これら関係者とアサミとのかかわりはそのパートごとに明かされていくが、最後まで分からないのは、誰がアサミを殺したのか、そしてこの無礼な若い男とアサミとの関係は何なのかというところだ。その答えを提示する衝撃の展開が待ち受けている。
一番の面白さは、それぞれ激しく展開される会話劇。シライケイタの真骨頂と言えるのかも。それぞれの俳優がこの劇作家の注文にきっちり応える演技をしているのだが、残念なのは主役の新木君。長ぜりふもあちこちにある会話劇で大変なのは事実だが、ちょっとかむ場面が目立ってしまっていた。
でも、この舞台は文句なく面白い。人間の身勝手さや正直さがクロスオーバーする展開には感動する。いい舞台だった。