アンネの日 公演情報 serial number(風琴工房改め)「アンネの日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    石原燃脚本、東京演劇アンサンブルの傑作『彼女たちの断片』を思い起こさせる。全ての登場人物の人生が徐々に重なり合って協奏曲となり、共通項である“生理”を入口とした女性論、人間論が紡がれる。それぞれの初潮を迎えた時のエピソードから、それを人に伝えた時の気持ち、その時の相手の反応。女性だったら誰もが抱え隠し持つ経験。人によって歓びだったり痛みだったり恥辱だったり優しさだったり。

    初潮から閉経まで女性の生理期間を日数として数えると、最大にして9年間だと語られる。女性の一生の内、9年間は生理中だということ。男性には想像もつかない。
    かつて中米の人と結婚した知り合いの女性が、高地の生活環境での生理が重過ぎて帰国したことがあった。その時は「へえ、そんな辛いもんなんだ」位の感想だった。
    自分にとって生理とは全く感覚的に掴めないもので、今回初めて知ることばかり。こういう教育こそ学校でやるべきだと思う。女性だけでなく男性こそ知るべきだ。皆こんな辛い思いを当り前に繰り返しているのか?

    プラカードやスケッチブックをラウンドガールのように抱えたアンネ・ガールズの入退場、椅子と机をマスゲームのように配置していくスマートな演出。背景の壁は残雪の残る山の岩肌を思わせる。

    アネモネコーポレーション生理用ナプキン開発部、サブリーダー、李千鶴さんは身体に害のないオーガニック(化学合成された成分を含まない製品)生理用品の開発を提言。突然の提案にリーダーの林田麻里さんは難色を示すも、ザンヨウコさん含め同期で未婚の女達が中心となり社内のコンペ企画に参加することに。

    ツワッチ役林田麻里さん、見事にニュートラルな立ち位置で物語のバランスを担った。
    ドイカナ役李千鶴さんの親友の死が物語の核となる。何故、そこまでオーガニックに拘るのか?
    個人的MVPはタボ役ザンヨウコさん。この人が口を開くたび、客席がどっと沸く。幼い頃に親が離婚、父親と祖母に育てられた生い立ち。

    鬼の企画部部長、オキョウさん役伊藤弘子さん。離婚して息子を育てている。更年期と閉経について語る。
    コンノ役橘未佐子さん、母親に愛されなかったトラウマを、結婚して出産した今も抱えている。

    エイカ役葛木英(くずきあきら)さん、好奇心旺盛なボーイッシュな化学者。初潮を教室で男子にからかわれたトラウマ。突然の謎の結婚に社内は興味津々。
    企画部の若きエース、サヤカ役瑞生(みずき)桜子さんは永作博美みたいな清純派顔だが、かなり気が強そう。邪悪な役を観てみたい。
    リオ役真田怜臣(れお)さん、本物のトランスジェンダー。整形なしで辺見マリ似のこの美貌。

    勉強になった。
    世の中、本当に知らないことばかり。

    ネタバレBOX

    生理とは果たして何の為にあるのか?
    人間以外だと一部の猿や蝙蝠、ハネジネズミやツパイなどの哺乳動物にしか見られない。他の動物だと発情期の子宮内膜の充血だけだったりする。
    月に一度、妊娠可能になった女性は受精の為に子宮内膜に厚いベッドを敷く。しかし受精しなかった場合、子宮内膜のベッドは剥がれ落ち、血液とともに子宮口から排出される。これがずっと繰り返される。
    最近の主流になっている学説は受精卵選別説(子宮内膜には受精卵の状態を把握し見分ける能力があり、確実に子孫を残す為に子宮内膜を常に新鮮な状態にしているというもの)。

    『アンネの日記』に記されている14歳のアンネ・フランクの綴った一節。「生理があるたびに(といっても、今までに三度あったきりですけど)面倒くさいし、不愉快だし、鬱陶しいのにもかかわらず、甘美なひみつを持っているような気がします。」
    オランダ・アムステルダムでの隠れ家生活でこんな文章を書ける感性。
    忌まわしき忌むべき穢れ、不浄、恥ずべき汚らしいことと長らく日本では禁忌化されてきた月経。
    1961年(昭和36年)、27歳の主婦・坂井泰子(よしこ)さんが設立したアンネ株式会社。「アンネナプキン」(日本初の使い捨てナプキン)の登場は女性を解放し、日本を世界一のナプキン先進国とした。

    RCサクセションの『いい事ばかりはありゃしない』の一節、
    「月光仮面が来ないのとあの娘が電話かけてきた」
    「月光仮面」の意味が「月のもの」だと知った時は驚いた。

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    2024/01/22 18:27

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