シラの恋文 公演情報 シス・カンパニー「シラの恋文」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2035年、コロナの後に力を取り戻した結核が再蔓延。昔日のように高原のサナトリウムには患者が隔離されている。日中戦争も予感されるし、地球温暖化も目前、サナトリウムでは自然農法に患者も医師たちも精を出すがこの施設を出、地上に生還できるものは数少ないと。
    そこにギター片手にテンガロンハットで現れた新しい介護士(草薙剛)の見る近未来の災厄の数々と、一目で落ちいった恋の行方はどうなる。
    いつものように北村想戯曲らしく、諦観している病院長(檀田安則)は古来の剣術が治療に役立つといい、府院長(鈴木浩介)は輪廻転生を説く。未来予測、宗教や先端科学のかみ砕いた(中には落語の一節もある)解釈などを織り込んで、俳句で筋を転がして、一瞬の恋こそが救済のきっかけになるロマンスものの1時間45分。満席の客席のほとんどは草薙ファンの女性たちだが、そういうファン・サービスの少ない北村戯曲である。
    しかし、北村戯曲になじんでいれば、これはまた、道具だてが変わるだけで処女作の傑作「寿歌」の現代版と見て取れる。
    大八車を引く浮浪者じみたゲサク、ヤスオ、キョウコの頭上に原子核戦争の放射能雪が舞う終末は、雄大な山麓を望む大きな山のスロープに降る雪になり、シラは戦争に駆り出されていく。シンプルな話でこのような韜晦趣味がなくても十分観客に訴える内容はある現代劇ではある。だが、年末に、関西・中部を回わり東京で打ち上げる二か月にわたる大興行となれば、舞台(の内容)と観客をつなぐものが、草薙の人気頼りというのはいかにも苦しかった。さすが何でもできる現代第一級の主演者も、これはなにもしないほうがいいのではないかと戸惑っているようでもあった。

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    2024/01/21 15:53

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