7/13-7/19『ON THE WAY HOME』(黒澤世莉演出) 公演情報 (株)喝采企画「7/13-7/19『ON THE WAY HOME』(黒澤世莉演出)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    丁寧に作られたシーンの力
    シーンの一つずつがとても丁寧で、
    それぞれに色を持っていて・・・。

    語られる物語に込められた思い・・。
    その質感に強く引き込まれました

    ネタバレBOX

    冒頭の「アカシアの雨がやむ時」というのは、
    その時代を象徴する歌といわれていたそうです。

    高度成長期に、義理の娘に初老の男が語りかける
    終戦時のエピソードという体で
    紡がれる物語・・・。

    息子のエピソードなどもイントロにしながら、
    終戦後の
    とある島からの帰国の物語が綴られはじめます。

    ひとつずつのシーンがすごく丁寧に作られていて、
    そこに風景の色や、その場の空気などもしっかりと描き出される。
    それぞれのシーンに
    空気だけではなく、
    温度や光までもが写り込んでいるように感じる。

    義父から娘に語られるという物語の枠があるから、
    物語の展開から浮かんでくる、
    個々のシーンの色の変化が
    拡散していかない。


    教師や日本人会会長、さらに山師たちの行動などにも
    実存感があって、
    その場をお茶をのむ舅と嫁の世界から
    物語ひといろに染め変えていく。

    雲を眺める二人の女性の会話に、
    ゆったりとした時間を感じて・・・。
    英字新聞から自らのふるさとの惨状を知る場面に、
    心の揺らぎが伝わってきて・・・。

    そして、噺を聴いていた嫁が
    物語にとり込まれていくことにも
    違和感がないのです。

    膨らんでいく物語の内側に入り込んだ
    戦時の狂気が降りてくる感じにも説得力があって。
    特攻や花と散るといった感覚の
    とりつかれたような狂気の質感が
    見事に形成されていく。
    どこか短絡的な部分と
    感情にとりつかれていく姿が
    舞台上を占有する・・・。

    その感覚の温度と薄っぺらさが観る側をも押し込んでいるから、
    舞台が物語を抜けて、
    舅と嫁の会話に戻った時、
    日本人たちが抱いた感覚に思い当たる・・。

    多分、文字でも絵でも表現しえないような、
    「アカシアの雨・・・」の時代、
    さらにはその時代にはまだ残っていたであろう
    今では想像すらしにくいような
    終戦前後の時代の残滓に浸されて。

    黒澤演出とそのトーンを作りきった役者たちの力に、
    ゆるやかにやってきて深くとどまる感覚を
    味わうことがきました。

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    2010/07/16 02:47

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