満足度★★★★
もう一度観たい
ひとつの戯曲を、演出家とキャストを変えて週替わり4パターンで上演するという企画。トップバッターの今週は時間堂主催 黒澤世莉演出。
時間堂を観ていると、場面に吸いよせられることがある。
丁寧に丁寧に物語を積み重ねたバランスの上で、突如、という感じでそれは起きる。
うまく表現できないのだけど、時間の流れがゆっくりになって、質量のあるものないものすべてが舞台上のある一点にスゥーっと集まっていく。そんな感じだ。今日もあった。
なんだかわからないが、とにかくわたしはその瞬間が好きだ。
太平洋戦争がおわって65年。
戦争というと、真っ先に戦闘を連想してしまうけれど、殺しあいは戦争のほんの一側面でしかないのだなあと、唸るような脚本になっている。そして、多様な側面を置き去りにして戦争を論じるのは、愚かなばかりか危険だということを暗に諭してくれるような作品であった。
まだ2日目で、正直、俳優さんたちの演技にはかなりの差がある。舞台のつくりが非常にシンプルで、演技力命だから、ちょっとぐらつくと何もかもが嘘っぽく見えてしまう。大変だ。
主演の菅野貴夫さんと、食堂のおかみを演じた木下祐子さんが、びくともせずに立て直し続けていたのは印象的だった。2人のちょっとしたしぐさ、短い一言で、全員の存在を信じられるっていう、これはもう超人的な演技力だと思う。
他の演出家さんの舞台を観たくなったのはもちろんのこと、できれば黒澤バージョンももう一度観たい。