7/13-7/19『ON THE WAY HOME』(黒澤世莉演出) 公演情報 (株)喝采企画「7/13-7/19『ON THE WAY HOME』(黒澤世莉演出)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ドンキホーテを彷彿とさせる
    戦争は終わってるのに、桜木の中では終わってない軍人魂と他の日本人らの物語。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    南太平洋の小島スタボラでは戦闘を知らずに緩やかに暮らしていた日本人達がいた。ある日、彼らは終戦を知り日本を目指して船出する。しかし船は太平洋の真ん中をグルグル、グルグル回っているだけで一向に日本を目指している気配がない。そんな中、軍人だった船長の桜木だけが日本に帰らず船ごと太平洋の真ん中で散らせようとしていた。

    日本に居た頃の桜木は優秀な軍人で、語学が堪能だった事が仇となってスパイ容疑をかけられていた。後に容疑は晴れたが、軍隊に戻れなくなった彼はスタボラ島に配属されたのだった。そんな経緯もあって軍で培った軍人魂は未だ抜けることなく桜木の中で培養されていた。マインドコントロールされた精神から「日本が負けるはずはない。そんなことがあって良い筈がない。この船こそが日本だ。共にいざ、潔く散ろうじゃないか、国の為に死ぬのが誇りだ。」などとのたまう。

    挙句、現地人のハイマと迫田を自分の意のままにコントロールし配下に置いてしまう。小さな軍隊の出来上がりだ。笑
    そして眼の前に見えた孤島を敵と間違えて機関銃を連発させる。前の時代の幻想にへばりついて己を見失い、真実を見ようとしないさまは、まるでドンキホーテのようだった。

    このように日本に帰還するまでの情景を、今は日本で緩やかに暮らす桜木が息子の嫁を相手に昔話として聞かせる。セットは中央に置かれたマットのみ。なのに太平洋の大海原を危なげに泳ぐ船の画や孤島スタボラの情景が見事に想像できるのはキャストらの演技力と脚本力、照明の技に尽きる。

    劇中、ウケ狙いでアドリブの小ネタを披露していたが、見事にスベッテいた。苦笑!
    現代の家族構成、マサオ(実息子)との確執も織り込みながら、息子の嫁と桜木の会話が微笑ましい。
    相変わらず菅野の演技力に唸る。そしてエリ演じる木下裕子の凛とした静けさの中に潜めく気丈さは「日本の女」の代名詞のようだった。キャストの中にはセリフ噛みが目立った輩もいたが、それをカバーするキャストらの全体的な演技力が勝ったチームだった。

    0

    2010/07/15 12:29

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大