兎、波を走る 公演情報 NODA・MAP「兎、波を走る」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/07/06 (木) 19:00

    ほんっとに、ほんっとにさぁ、野田はさぁ…なんでこの内容で休憩無し2時間ちょいに収められると思ったのか!収まってるけど!収まってるけども!確かにどこで休憩入れるのよ、とは思うしコレは休憩なしで駆け抜けた方が絶対いい芝居なんだけど!情報が多い!頭フル回転!見終わったあとの疲労感!ああー…野田作品観たなー…。

    ネタバレBOX

    なんにも情報入れずに観て、今回のテーマとか扱ってる題材とか、なんにも知らずに観て、不思議の国のアリスだってことだけは知ってたけど後は何も知らないまま、前半は楽しく笑ってたのに、後半どんどん不穏になって、あれ?これって…と気付いてからは坂道を転げ落ちるみたいに自分の知ってる現実の情報と作品の中に散らばった情報が繋がりだして、ついには決定的な名詞が出てきて、逃げ場を全部潰されて目を背けることも出来ずに突きつけられて、言葉でボッコボコにされた。もうニュースで聞くことも、SNS上で目にすることも少なくなった「北朝鮮拉致被害者問題」…それが野田の書く不思議の国のアリスの物語。アリスの母親は被害者家族、兎は亡命してきた元工作員。もう、2人ともいない。「時」ではなく「一生が過ぎ去ってしまった」という台詞の重さ。あの人はもう、亡くなってしまった。北朝鮮に自分の娘が今も生きてるかもしれないのに会えないまま。

    38℃を超える高熱で見る夢、みたいなシーン。カエルやらエビやら双頭の白狼やら、造形がめちゃくちゃ好き。異形のサーカスみたい。

    大倉さんの膝の上で腹話術人形になってる野田さん、サイズ感もだけど動きがマジで人形だった。

    直接的ではなく、におわせる動きや台詞の塩梅が絶妙。日本人が共通してもつ北朝鮮へのイメージ(パレードなどでの行進)北朝鮮拉致のうっすらとした知識(めぐみさんが海の近くで拉致された、は1番ニュースで取り上げられてきたし、工作員育成などに関わっていたという話もふんわりと知ってる)を少しづつにおわせて観客が「ああ、確定だな」と思ったタイミングとドンピシャで確定情報を出してくる。野田には観客の心が読めている。恐ろしい。

    野田さんの戯曲はさ、いつも「怒り」「憤り」を感じる。

    赤い服にヘルメットのこちらからあちらへの亡命者ってのは「よど号ハイジャック事件」の犯人たちですね。なんとなく昔、テレビで見た記憶がある。
    ググッてハイジャック事件の経緯と、現在の犯人たちがまだ数名現地に残ってることを知った。遠い昔のことだけど、当事者がまだ生きている、生々しい記憶でもあるんだな。
    フェイクスピアもそうだったけど、えぐるよね、野田さん。「忘れるな」と言わんばかりに。

    松さんのエネルギーがすごい。全てのものをなぎ倒していけそうな強さを感じる。腕一本で森を更地にできそう。
    対する一生さんも舞台上でのエネルギーが化け物みたいな人だから、それらがぶつかり合って絡んでうねってどんどん膨れて弾けてしぼんでいった先に1粒の小さな小さな希望というか願いを残すようなラストが素晴らしかった。
    あれは祈り願い希望だと思うんだけど…違うかなぁ…あー…違うかな…うーん…まだ終わってないぞ、続いているぞ、という示唆だったのかな…

    あんなに前半笑ってたのに、後半でめちゃくちゃ殴られるから、楽しかったー!とはならないのよ。でも、演劇として面白い。だから全然ハッピーな気持ちになれなくてもみんな当日券にならんでまで観るんだろうな。

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    2024/01/02 20:03

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