東京ノート 公演情報 BeSeTo演劇祭「東京ノート」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    【青年団版】鑑賞
    新国立劇場中ホールが美術館の一角へと演出され、美術館特有の
    静謐な空間がそこに自然に現れたように感じました。 

    時折後ろで聞こえる足音さえも不自然に思えないほど、舞台と
    それ以外の空間の境界が溶け合って一つになったように。
    私には思えました。

    この劇の一番最初、「マヨネーズ腐らせて~」の件、ピンター「帰郷」の
    出だしの台詞「ハサミは~」を何故か思い出した。 

    そういえば、設定も、何もかも違うけど両者そんなに遠くないように感じる。 日常にある、得体の知れないモノ、を客に感じさせる、みたいな。

    ネタバレBOX

    静謐な空間で話されるのは、何気ない呟きのように儚く、次の瞬間には
    霧散し忘れ去られるような言葉の数々。 

    でも。

    その中に時折微かな「違和感」が混じっていく。
    それはひたひたと忍び寄る戦争の影だったり、終焉を迎えそうな夫婦の
    姿だったり、未だに清算されることのない慕情だったり。

    その「違和」は透明に広がる水の中にほんの一滴落とされたインクの様に
    最初は目立たず、でも時間が経つにつれて表面を徐々に浸食していく。

    ただの普通の、何も起こらない美術館での一日のはずが。
    そこでほんのわずか同じ空間を共にする人間達それぞれが、
    言葉には表れない思いを抱えて生きていることが、徹底的に
    選び抜かれた言葉、恐ろしく緻密に計算された構成でもって
    時折鋭く私たちの心のひだを抉ってくる。

    必ずしも「強い言葉」が核心を突くとは限らない。
    一見、他の言葉と一緒に聞き流してしまうような微かな言葉にだって
    衝撃を与えるものがたくさんある。

    それに気がつくと、この「静かな演劇」の代表作がどこか不気味で
    スリリングで緊迫した雰囲気の中、一瞬も台詞を聞き逃せず、
    役者の動作一つもうっかり見逃せないような、恐ろしく重厚な作品となって
    私の前にあるような、そんな気がしてならなかったです。

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    2010/07/13 23:47

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