『アタシが一番愛してる』 公演情報 バナナ学園純情乙女組「『アタシが一番愛してる』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    前線で戦う演劇。
    デジタルに侵されていく脳みそにアンドロイドになりかけの身体を引きちぎれそうな程に目一杯動かして、けたたましい爆音を響かせて、光速で駆け抜ける。まるで消費されていく演劇に「私たちには時間がないの。」と宣言をしているかのように。ある特定の時期の女の子が持つ今にも消え入りそうな儚さとあどけなくて野性的な欲求が接触した時に爆発する熱量の凄まじさ、天空を引き裂いて漆黒の闇に火の粉を降らせるような破滅的な美しさに片時も目が離せず、大いに魅せられた。

    ネタバレBOX

    劇場に一歩足を踏み入れると受付には、チェック制服を着用したり、巫女のコスプレ姿のスタッフの方々がおり、『バナナ学園』の世界がはじまっていた。開演前から初音ミクちっくな音楽がぐるぐる流れ、更にエヴァンゲリオン的な極太の白い明朝体の文字が空間全体をプロジェクターで投射されていて、気分は上々。主宰の二階堂さんから開演前の挨拶の後本編へ。この際、公演を授業と言われたのが痛快だった。

    物語は私立永田中学校で毎年開催されるミスコンを中心にした学園内の悲喜こもごもが主。
    ミスコンにエントリーした生徒同士が火花を散らす様子や、前年度の優勝者が行方不明になったことからミスコンの開催を見合わせようとしている風紀委員会とミスコンを続行させようとする実行委員会の対立、学園内のちょっとしたいじめや恋愛模様などの日常風景が、時には同時多発的にザッピングされていく&とにかくめまぐるしく物語は展開し、かつ早口言葉で発話するため、話のすべてを追うのはかなりコツが要るのだが、本筋を追わないor追えなくても、ほぼ舞台に出ずっぱりな体操服をきた役名すらよくわからないひと(浅川千絵さん)が本筋にいちいちツッコミというかチョッカイを出しているので、彼女に注目して観ていても退屈はしないように配慮がなされていて、刺激的。しかも彼女の言うギャグが妙に懐古的で、広末涼子や鈴木沙理奈、電気グルーヴの曲だったり、金魚注意報がネタとして登場したり、水槽のなかで増殖する綾波レイを彷彿とさせるようなシーンが挿入されたりして、自分が中学生の頃を思い出した。

    終盤、行方不明だった前年度のミスコングランプリである神宮は、姉川という同級生の女が鎌で殺害し、切り落とした頭をリュックサックに入れて登校するところは、かの榊原事件を踏襲していたのかな。

    姉川の行動は、時間系列としてはいつ行われたものだったのか。曖昧なまま終幕した印象があるのだが、私が見落としてしまったのか、続きは次回に持ち越しなのか、モヤモヤするところではあるものの、要所要所で登場する神宮がミステリアスで刹那的で美しかった。

    キャラクター造形がとにかく緻密になされていて、登場人物がみんな個性的でよかった。個人的に一番のヒットだったのは、ミスコンにエントリーした”紫のドレスに身を纏う巨大な化け物”苦下沢ビビ。紅白歌合戦で毎年奇抜な衣装で話題の小林うんちゃらさんを明らかにオマージュしていた味付け加減がかなりツボでして、巨体を揺らしながら旋回するだけで大爆笑でした。

    本編終了後のおはぎライヴもオマケとは思えぬクオリティの高さ。
    近未来的で暑苦しくて、アイドルちっくでありながら、可愛いだけで終わらせない振り切れ方が潔くて恰好よかった。
    パフォーンスが素晴らしかっただけに、ラストで観客を舞台へあげる時、遠慮があったように思われたのはすこし気になった。
    (まぁそれは私がいかにも陰気そうな風貌だからっていうのが原因かもしれないけれども観客を巻き込む図々しさはもっと出してってもいいかもしれない。)

    あと余談ですが、会場する際に頂いた前園あかりさんのプロマイド写真と直筆の『未来なんてない』がすごく嬉しかったです。

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    2010/07/12 11:35

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