実演鑑賞
満足度★★★★
12月3日午後、東京は墨田区にあるすみだパークシアター倉で上演された劇団桟敷童子新作公演『空ヲ喰ラウ』を観てきた。これは、知人の役者・もりちえが出演していた関係からである。
客席について目に付いたのが、丸太を組んで作り上げられた舞台装置。バックステージツアーの組まれた日もあるので、この舞台装置、いつものようにラストシーンで大転換をするであろう事が予想された。出演する役者は、劇団員15人に客演4人という桟敷童子としては大人数ではないだろうか。
今回、脚本のサジキドウジは話の骨格に空師という職業を据えた。当初自分はこの空師というものはサジキドウジが舞台のために作り上げた架空の職業と思ったのだが、開演前スマホで検索すると、この空師というのは実在の職業である事を知ってビックリ。ん~、ただ、舞台を観ていて空師達の発する「来々」(らいらい)や「ご安全に」というフレーズは過去の作品でも結構聞かされていたなぁという印象。何か新しいフレーズもあってほしかった。
さて、話はとある山村。この山々の木々を管理しているのが、中村組と梁瀬組という空師の組織というか会社。かつては中村組が幅をきかせていたのだったが、今は頭領が脚を痛めて妻にその座を譲り、梁瀬組が大きくのし上がってきている。過去の歴史もあり、梁瀬組も一応中村組の顔を立てているが、なにせ中村組は女性ばかり。まして、中村組の空師の一人・織本千尋は心臓に持病を抱え、空師の厳しい仕事を続けて行くには不安があった。そんな山地に紛れ込んできたのが、町で問題を起こし逃げてきた彦島春一。偶然中村組の人間に発見され、空師の仕事に向いている事が分かり千尋の元で空師の仕事を学び始める。そこに横やりを入れてきたのが中村組の元頭領、現頭領・中村歩生の夫で脚を痛めた中村成清。町で起こした事件を空師達に暴露すると春一を脅し鐘をせびるようになり、それがエスカレートして春一は死を覚悟して山に消える。中村組や梁瀬組の山師達が春一を探すが見つからず、どうやら春一は山で命を絶ったらしいことが知られる。
その後、中村組は梁瀬組の傘下となり、空師達は今日も仕事に死を出す。
劇のクライマックスは春一が死を覚悟をして山に入り、それを皆が探すシーン。舞台装置が左右に展開し、巨木が現れる場面であろう。
舞台を観ている瞬間は感動と衝撃を受けるのであるが、よくよく考えてみると春一の犯した町での罪は死を覚悟するほどのことだったのかという疑問。春一を死に向かわせる動機がやや弱かったのではなかろうか。
その春一を演じた吉田知生の演技が素晴らしかった。それに、中村組頭領役の板垣桃子、織本千尋役のもりちえと、中村組を演じた役者達の熱演が目立った。客演陣も頑張ったけれど、今回はこの3人に良いところを全て持って行かれたという感じ。
次回は来年の新作。楽しみにしている。