ガラリ 公演情報 表現集団 式日「ガラリ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    親心と自立の狭間で悩む少女の旅立ちを描いた心象劇といったところ。人の思いや考え方、どの側面を捉え 見るかによって「ガラリ」と違う。親と子の立場や考えの違い、それを精神科医の問診を通して展開していく。少女の心象であるが、その世界観は分かり易い演出によって巧く表している。

    少女の名は 月下海(木下美音サン)、その名の通り深海を思わせるような浮遊感ある舞台美術。同時に、舞台幕を使用して 心に思い描く世界(空想)と現実の世界(問診)…ファンタジーとリアルといった表現の違いも巧い。この違いが テーマ「孤独」を上手く表出している。そして自由・肯定と束縛・心配といった子と親の心情が浮き彫りになる。

    親といっても父と母では子への接し方も異なり、親の過去(成長過程)が関係しているという。ただ この親子の関係性は 典型的で斬新な切り口になっていないところ、そして人を観察し深堀しようと試みているが、少し理屈っぽいような気が…惜しい。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし) 12.11追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、客席側(前)と奥(後)は異なる配色でシンメトリー。それぞれ長箱2つと椅子を置き、その間を舞台幕で遮り、美音の心象世界と現実世界を表出する。美音(後)の世界は白布に描いた魚、そして傘や洋服が吊るされている。長箱を始め全体的に白を基調にしており透明・浮遊感を漂わせている。一方、現実(前)は黒茶色で重量感あるもの。この明暗の配色は 衣裳も同じで、美音の世界に登場するのは白服、一方 両親は黒っぽい。医師は黒服の上に白衣で折衷、美音本人は深海イメージであろうか、深緑のフワッとした服で、それぞれの立ち位置を表している。心象と現実を巧く表す演出が、観客にやさしい。ちなみに場転換時の音響はピアノで美音の進路を示唆しているよう。

    物語は、美音の進路をめぐって 彼女と両親が話し合うところから始まる。美音は自分の気持(自己肯定)をうまく伝えることが出来ない。両親にしてみれば、態度がはっきりしない娘にイラつく。そして美音は3か月前に意識不明に陥る。その原因と解決を求めて精神科医と両親の話(問診)が始まる。

    彼女は自分の世界に閉籠り、そこでは 説明にあるような友の死を抱える元高校球児、作家の夢を捨てた風俗嬢など4つの物語(一冊の本…何を意味するのか)が紡がれる。それは幼い時に見た世界で、自分の気持の表れであった。真に何がしたいのか、何者にもなっていない女性の成長過程が瑞々しく描かれている。一方、両親もその親や家庭環境の中で挫折や諦念といった苦汁を味わっていた。その後悔から娘を同じような目に遭わせない、それが無意識のうちに美音の意識や行動を制約していたよう。

    精神科医の問診が両親の深層へ響くといった結末だが、実は兄の陸(演出:佐伯啓サン)が目覚めない美音に話しかけていたと。両親は兄 陸と比べることで美音にプレッシャーをかけていた。美音が目覚め両親と打ち解けるのであれば、ずっと話しかけていたのは両親にすべきでは?
    いい子でありたい美音の心情はよく聞く設定。そしてラスト、陸と医師の話(礼を含め)は纏める様な理屈付け、物語を説明したような印象を受けた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/12/09 16:50

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