8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』 公演情報 8割世界【19日20日、愛媛公演!!】「8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    戯曲の豊かさを作り手が受け止める
    戯曲がとてもよくて、演出家や役者もその良さに甘えることなく自分の色を出していました。

    多少荒削りな部分がなかったわけではないのですが、実直な質感をもった創意が舞台にあって楽しむことができました。

    ネタバレBOX

    30分の短篇と60分の中編二本立て。同じ作家の作品を劇団員二人がそれぞれに演出するという趣向。

    ・欲の整理術

    始まってからしばらくは、物語の枠が伝わってこないいらだちがあったのですが、
    上演中に当日パンフレットで役者の名前をちらっと確認した際に、
    作品のタイトルも目に入って、すっと舞台が腑に落ちました。
    そうなると、舞台の一つずつの要素がおもしろかったです。

    タイトルも認識しないで、芝居を観る私も、
    まったくの不心得者で恥じ入るしかないのですが
    前説時に、作品のタイトルをさりげなくしつこく観客に刷り込んでくれると
    理解の立ち上がりがもっと早かったかもw。

    作者の煩悩やいらだちへの葛藤というか、心情の様が枠として定まると、
    事象の一つずつがとてもしっくりと理解できる。
    バリケードに始まって、要求書、電話から火炎瓶まで、紙に書かれた薄っぺらい質感だからこそくっきり具現化されるものがある・・・。

    とても間口の広い戯曲だと思うのです。
    演出家や役者が自らの感覚をすっと載せていくことができる作品だと思う。
    だから、もっとかぶいてもよかったのかも知れません。
    演じ手がもっとロックであっても、もっと凡庸であっても、沈んでも
    しっかり支えられる戯曲なのだと思います。

    おもしろかったのですが、その欲の暴れ方がちょっと中庸で
    おとなしい感じもしたことでした。

    ・ガハハで顎を痛めた日

    翌日初めて教師として赴任する5人が、
    授業のシミュレーションをするというお話。

    戯曲の構成がほんとうにしたたかで、
    授業のシミュレーションという切り口から、彼らの理想がまずこぼれ出て、
    そのベクトルから、彼ら自身の価値観、不安などが溢れてくる。

    自己の価値観を誇示するあたりでは、
    もう完全に物語りに取り込まれていました。
    先生候補それぞれの、表層と内心それぞれに、
    とても生々しい実存感があって、
    個々のキャラクターの距離感の取り方も絶妙。

    しかもこの舞台はそこにもう一つの枠が織り込まれていて・・。
    現実の女学生の会話を先生たちの周りにちりばめるやり方も、
    息をのむほどにしたたか・・・。
    役者たちはロールとして女学生を演じるというよりは、
    生活の感覚ごと女学生を切り取っていく感じで、
    建前や理想や自分が抱えたもので語る教師の卵たちと
    質感の異なる想いを醸し出していく。

    その女学生たちが、
    教師のことをすらっと語る部分に、
    教師の視野と生徒側の視野が一瞬重なって、
    学校の内側の互いにコントロールしえない、
    でも絶望的というわけでもない、
    バランス感のようなものが見えてくるのです。

    このふくらみこそ、舘戯曲の真骨頂かと・・・。
    演出側の工夫、
    シミュレーションの椅子の位置での状況の示唆や、
    舞台の空気の作り方なども見事に機能して。
    しっかりとした印象の作品を拝見することができました。

    ☆☆☆★○

    8

    2010/07/10 11:35

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  • さちえ様

    コメントありがとうございます。

    あの女学生二人の会話に存在した「間」は、通常のお芝居とは異なり、攻撃的で秀逸だったと思います。良いものを拝見させていただきありがとうございました。

    また、公演を拝見すること、楽しみにいたしております。

    2010/07/15 22:46

    りいちろ様
    ご来場、そして丁寧なご感想、本当にありがとうございます!
    こういった喜びを分かち合えるのも、演劇が与えてくれる最高の贈り物ですね☆劇場でお会いできて嬉しかったです◎10月、またお会いしましょ~(*^▽^*)/

    2010/07/14 10:39

    りいちろ様

    更なる武井さん情報ありがとうございました。
    tetorapackさんのコメントで、ジャニスの件を知り、まあ、そんな衝撃的な才能の方が、8割世界に客演して下さったのかと、感無量でした。
    私も、その舞台、拝見したかったなあと、とても残念です。

    今回、女性陣は、2バージョンの役を演じられて、皆さん、卒なくこなされてはいたものの、やはりどちらかの役の方がよりいいなという感じだった中、武井さんだけは、どちらも互角に良かったので、かなり実力のある女優さんだなとは思ったのですが、その上、ミュージカルでも、実力者だなんて、スゴイですね。
    私も、武井さんの今後の舞台には注目したいと思います。

    2010/07/14 00:20

    鈴木雄太様

    コメントありがとうございます。
    また、終演時にはお話をさせていただき、
    ありがとうございました。

    また、劇場に足を運ばせていただきます。

    これからの作品も、楽しみにしております。

    KAE様

    武井翔子さんのお話は、駅までの帰り道、超劇場通さんとご一緒にさせていただきました。

    私が最初に彼女の舞台をみたのは、Dul-Coloered Popがタイニィアリスで上演した「JANIS」でしたが、その時の衝撃は並大抵のものではありませんでした。まさに圧倒的・・・。ジャニス・ジョップリンの最後のアルバムに一曲だけ「生きながらブルースに葬られ」というインストロメンタルが収録されているのですが(アルバムレコーディング中に急逝したため、その曲だけが歌なしで収録された)、それに歌詞をつけて歌った彼女には震えがきました。

    その後も、黒澤世莉氏演出のミュージカルに出演されたり・・・。ただ、ストレートプレイを拝見するのは今回初めてでした。

    歌だけでも、十分に勝負できる力を持ちながら、一方でいろんな余白がまだたくさんある方だと思うのですよ。今回の舞台を観て、改めてそのことを実感しました。

    今後がとても楽しみな女優さんだと思います。

    2010/07/13 22:39

    りいちろ様

    温かいコメント、ありがとうございました。

    私、どんな知り合いや家族が関わっている公演だとしても、身贔屓は絶対しない信念があるものですから、最初観た日は、本当に、「欲の整理術」の方、何これ?と正直かなりガッカリしたんです。でも、2回目を観に行く前に、りいちろさんの御感想を拝読し、そうか!と腑に落ちるところがたくさんありました。キャストの皆さんも、前日とは打って変わって、進化されていましたしね。

    私は、以前tetorapackさんにもお話したのですが、たとえ家族や親しい友人が出ていようとも、券は必ず正規の値段で購入していますから、観る芝居は、いつでも、代価を払っつた1人の観客としての視点しかないので、今回も、最初の私の酷評は、かなりキャストの女性を傷つけてしまったようで、申し訳なく思ってしまいました。
    本当に、りいちろさんのコメントを拝読できて、評価が変わって、幸せに思いました。
    重ねて御礼申し上げます。

    りいちろさんは、武井さんのお芝居を以前ご覧になっていたのですね。
    では、tetorapackさんに、武井さん情報をもたらされたのは、りいちろさんでしたか?

    私は、今回、初めて、武井さんを知りましたが、歌もお上手とのこと、また是非拝見したい女優さんがお1人増えてしまいました。
    主宰の鈴木さんは、書く才能も演出の才能もありますが、もしかしたら、キャスティングが一番得意なのかもしれない気がしました。
    本当に、いつも彼の役者さん選びには驚かせてています。

    2010/07/13 00:52

    ご来場&「観てきた!」コメントまことにありがとうございました!作品ごとに本当に丁寧に書いて下さり…ありがたく読ませて頂きました。

    自分は『ガハハ』の演出家でしたので、椅子の使い方、配置を楽しんで頂けたのでしたら本当に嬉しいです。いつも本公演がシッカリ建てこんだ装置で芝居を作っている為、こういう演出に挑戦できたのは新鮮でした。また番外公演で新しい演出にチャレンジしてみたいです。

    10月の本公演にも今回の経験をうまく活かして頂きたいと考えております。…まだどう活かすかとかは具体的には見えてはおりませんが(笑)

    今回は本当にありがとうございました。
    今後とも8割世界を応援してやって下さい。よろしくお願いいたします!

    2010/07/12 12:23

    KAE様

    コメントありがとうございます。

    いつも拙い感想を丁寧にお読みいただき、
    恐縮しております。
    そんな、レクチャーなんて・・・、滅相もございません。

    舘さんの作品については、
    それほどたくさん拝見したわけではないのですが、
    これまで観た作品にも、
    コンテンツ自体の秀逸さに加えて
    戯曲の外側にある概念や枠組を利用して
    さらに膨らんでいくような部分があって。
    物語の展開を超えて、やってくるものがあるというか・・・。

    今回の2作品の風変わりなタイトルには、
    演出を他の方にゆだねるなかでの
    作者の表現したいことの意図が
    暗示されていたような気がします。

    久しぶりに武井さんのお芝居を観ることもできて、
    いろんな意味でとても楽しい観劇でした。






    2010/07/12 10:11

    りいちろ様

    昨日、初見で、いろいろ不満が多かったのですが、今朝、りいちろさんの、愛情溢れるこの御感想を拝読し、「ガハハ~」の別バージョンを観に行ったら、「欲の~」の方も、昨日よりは、大分好意的に観られるようになりました。
    「欲の~」の見方というか、りいちろさんの捉え方のレクチャーのお陰で、腑に落ちたことがずいぶんあったような気がします。

    りいちろさんの御感想って、いつも必ず否定的でなく、その劇団の良いところを詩的に指摘されて、伸ばしてあげようという、ご厚情を感じるので、拝読するだけで、気持ちが落ち着き、幸福感でいっぱいになるのですが、今回の御感想は、自分が個人的に応援している劇団だけに、余計、嬉しさに満ち溢れるレビューでした。
    何だか、りいちろさんに、いろいろ教えて頂いた気が致します。
    ありがとうございました。

    2010/07/10 22:28

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