ダモイ 公演情報 トム・プロジェクト「ダモイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    静かに染みる
    わずか3人の役者が、声高にならず、じっくりと見せてくれた。
    事実をもとにした舞台だけに、計り知れない重さが残る。

    ただし、重苦しいわけではなく、人間の強さや生きることの尊さを感じることができるのだ。

    ネタバレBOX

    シベリア抑留の話である。
    戦後、兵士だけではなく、一般市民も含め、多数の方がシベリアに連行され、長期間に渡って収容所に入れられ、過酷な労働を強いられた事実をもとにしている。

    舞台は、野上(新納敏正さん)のモノローグを中心に、収容所にいた多くの方に生きる力を与えて続けて、帰国の夢が叶わなかった満鉄職員の山本(下條アトムさん)のことが語られていく。
    山本は、タイトルでもある「ダモイ(帰還)」を信じ、常に前向きで、周囲を明るくさせ、生きる力を与えるような人だった。
    彼の生き様により、多くの収容所に暮らす人々が救われたのだ。

    収容所の過酷な状況を声高に非難するのではなく、このような境遇にあっても、「生きる」ことを強く願い、「人間である」こと(あるいはいつかは、それを取り戻すこと)を忘れずにいた人々があったということを強く訴えてくる。

    人間の強さや生きることの尊さを感じずにはいられない。
    舞台自体も、そういう力強さがあったと思う。

    最初は、山本のそういう姿勢に反感を覚えていた野上役の新納敏正さんが、徐々に彼に惹かれていく様子や、山本に寄り添う新見役の大出勉さんの姿がとてもいい。
    山本を演じる下條アトムさんの控えめだが、うちに秘める強さを感じられる演技も素晴らしい。

    登場人物はわずか3人なのだが、山本の収容所での位置づけや、彼らの後ろにいるであろう、多くの日本人収容者たちの姿が浮かぶようである。

    切々と、舞台から語りかけるような3人の役者の演技は、見事であり、じんわりと心に染みてくる。

    とかく、冬だけのシーンを想像しがちなシベリアにあって、四季があるこをきちんと見せてくれた。それはまた、彼らが抑留された期間がいかに長かったということにほかならない。

    ラストへの展開は、事実を知っていても、涙を禁じえなかった。

    4

    2010/07/10 05:34

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  • KAEさん

    そうなんですよ、下條さんはまさに適役でした。

    トム・プロジェクトは、再演、再々演が多いので、きっとまた上演してくれると思います。

    2010/07/13 04:21

    アキラ様

    きっとそうだろうと思っていました。
    下條さんも、声を荒げない、訥々とした喋り方の方だから、この作品には、適役だろうなと想像していました。

    またいつか再演した時には、是非行きたいと思っています。

    2010/07/13 03:22

    KAEさん

    コメントありがとうございます。

    下條さんが、実際の山本さんとそっくりでしたし、肩に力の入らない感じが、とてもよかったです。

    2010/07/12 07:32

    アキラ様

    「ダモイ」の御感想、嬉しく拝読させて頂きました。
    本当に、素晴らしい作品ですよね。
    私は、平田満さんの時、3回観ていますが、アキラさんがここで書かれている御感想とほぼ同様の感想を抱きました。
    声高でなく、きっちりと戦争と人間を描き、人間の尊厳を崇高に描写している秀作だと思いました。
    この作品も、長く、戦争を語り継ぐべき佳作の一つだと思います。

    2010/07/10 22:39

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