実演鑑賞
満足度★★★
iakuに続き、二週続けて日本の山林労働者を素材とした舞台を見た。
日本は国土の七割(だったか?)を山林に覆われていながら、そこで生活する人たちがドラマに登場する機会は少ない。iakuの素材は猟師、桟敷童子の「空ヲ喰ラウ」は森林保全の労働者が素材である。
山の労働者が、土建業のように、「組」で組織されていて、『空師」と呼ばれていることも知らなかったから、素材としては新鮮である。その仕事の作業実態も、日々の生活も、労働者不測の現状も知らなかった。そのような情報に関してはほとんどキャンペーンドラマのように整理されてせりふではっきり説明されるのでよくわかり、面白く飽きない。
しかし、ドラマがそこに住む人たちのリアルな心情を映して、下界で生きているものに訴えるかというと、そこが弱い。労働者たちの作業する山の領域を争う組の対立で、描かれる人々は、まるで落ち目になったやくざの組の勢力争いをする人々のようなキャラクター付けだし、異分子として山に入ってくる若い人たちも、よくあるテレビドラマ的な安易な設定と古めかしい物語展開である。パガニーニの選曲もどういうつもりが分からない。こけおどしか。
舞台がべた、割セリフのように進むのも興をそぐ。2時間弱。満席。
「空師」という言葉は確かに新鮮で、象徴性も訴迫力もありいい言葉だが、そこへもっていけば収まる、というところがつまらない。この劇団は、戦後一時流行った集団製作のような劇団制をとっていて、今の時代にどういう作品が生まれるが見てみたい気もするが、せっかくの素材を、セットでしか生かせないとすると、集団の創作力も鈍っていると自戒しなければならない。戦後のこの手の製作手法で活動した劇団は、その自戒を怠った所から自壊していった。