クリスマス・キャロル  公演情報 劇団昴「クリスマス・キャロル 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    小説を読み映画も鑑賞しているが、舞台は初めて観た。劇団昴のクリスマス・キャロルが今後 この演目の基準になるが、極めて高い水準になるだろう。

    物語は、クリスマス・イヴの夜、守銭奴の老人スクルージは死んだ同僚の幽霊と過去・現在・未来のクリスマスの精霊に導かれて、時空を超えて不思議な体験をするといった よく知られた内容。公演の見どころは 勿論スクルージの不思議な時間を過ごす、すなわち心の彷徨を経て心温まるラストへ…。
    その展開を支えている舞台美術が素晴らしい。劇場に入った瞬間、その不思議な世界に誘われる。そして歌・ダンスといった観せる魅力、ファンタジーといった雰囲気を漂わせる照明など、舞台技術を駆使した演出も効果的だった。何より宮本充さんの頑固・偏屈な老人エベニーザ・スクルージ役がピタッとはまり、その熱演に観入ってしまう。

    内容には教訓的と思われるところも散見されるが、それを上回るエンターテイメント性によって 人の優しさ温かさ、よく耳にする「人は一人では生きていけない」といった普遍的な思いが伝わる。上演時間2時間10分(途中休憩15分)だが、感覚的には あっという間、けっして重く暗くならない、逆に生きる希望と勇気がもらえるような好公演。 12.8追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、ほぼ中央にレンガ作りの門(出ハケ口)、その上部にスクルージの部屋(ベットや机)があり、左右非対称に階段が設えてある。上手下手に石垣風の門があり、雪が積もっている。天井には3つの針のない丸時計(内にはランプ)が吊るされている。

    冒頭、過去・現在・未来のクリスマスの精霊が 予めこれから始まる物語は現実ではない旨説明する。スクルージの今の暮らしを描き、そこに散りばめられたエピソードが過去・現在・未来に少しづつ絡んでいく。勿論 物語の展開にしたがって情景が変わるため小道具・小物、そして登場人物や衣裳が変わる。描かれる世界観は分かり易く、あれこれ考えることなく、素直な気持で観ていられる。その意味では老若男女といった幅広い人々に受け入れられるのではないか。

    毎夜午前1時に目が覚める、そして現れる精霊たち。出で立ちは異なり、その姿かたちはスクルージの過去・現在・未来に重なる。精霊は自分自身であり己との対話(悔悟・改心・希望)のよう。それぞれの世界観へ誘われる時の照明が印象的だ。そもそも舞台美術が外国の街ーレトロ感(1843年クリスマス イヴ)に溢れ、その中で色鮮やかな回転照明で幻想光景へ。

    先にも記したが、スクルージ役の宮本充さんの演技が見事。そして彼の周りにいる人々を一人何役も担いながら物語を立ち上げているが違和感はない。スクルージの貧しい生い立ちが彼の生き方を決定付けたようだが、強欲を否定しきれないのが現実。今 コロナ禍によって、不寛容で閉鎖的な世になったような気がする。そんな暗い世相を吹き飛ばすような<人間愛>に満ちた公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/12/05 17:49

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