「精跡-SEISEKI-」 公演情報 角角ストロガのフ「「精跡-SEISEKI-」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    強い色と剥ぐ力
    設定に観る側までも押し込んでいく力が宿り、
    剥ぎだすように人間の本質にあるものが伝わってきます、

    強い色に押し込まれて
    溢れ出してくる
    人間のコアにあるものに
    凌駕されました。

    ネタバレBOX

    駄目な人は駄目なのかもしれません。
    R15的な内容も含まれていたりもします。
    でも、舞台に観る側の目を向けさせる匂いが満ち溢れ、
    そこに人間の本質があからさまに晒されていて。
    気が付けば時間を忘れて見入ってしまいました。

    冒頭の設定など、女性たちにとって
    理不尽この上ない話なのですが、
    それが表層的な嫌悪にならず、
    観客を支配していけるのは
    舞台全体に
    人間の本質を剥ぎだすような力が存在するから。

    少子化対策という法律のお題目を見事に形骸化させた
    前半の舞台を支配する秩序に目を奪われる。
    障害者を守るという良識を、
    制度としての保護に置き換えた歪みが
    舞台の内圧をさらに高めて・・・。

    その閉塞感が変容して、
    物語の屋台骨を崩していく後半に息を呑む。
    前半に統制されていた、人の立場、モラル、欲望、弱さなどが
    あからさまな色で流れ出す。
    物語がゆすぶられ、モラルハザードが生まれ
    人間の奥に包み隠されるべき本質が、
    観る側の下世話な興味や恣意的な思いすら踏み越えて
    あからさまに晒されて行くのです。

    牛乳や木の実などでの表現もしたたか。
    作・演出の表現する世界観に
    ためらいがないのも良い。

    公開オークションのようなどこか猥雑な雰囲気も、
    障害者を最高ランクとするその業者の慇懃無礼さも、
    印象としてはとても強く、
    建前の裏側に張り付いた人間の背徳や腐敗の匂いを
    これでもかと醸していくのですが、
    役者達の演技には
    その色の強さの中でもうずもれたり
    滲まないだけの描写が貫かれていて。

    3人の奴隷にしても、
    一つの概念として描かれるのではなく、
    女優たちが個々にキャラクターをがっつりと背負っていく。
    監禁された当初から、個々が変化していく姿が
    緻密に描かれていくのです。
    それは管理者側も、障害者にしても同じ。
    よしんば、ロールがスクランブルしたとしても、
    個々のキャラクターが埋没せずに舞台に生きているから、
    浮かび上がってくる人間のコアの部分の
    表現があやふやになったり陳腐化することがない。

    観客からみても
    役者たちにはストレスがかかる舞台なのだろうと思います。
    でも、そのストレスの代償が、
    舞台上でしっかりと実を結んだ舞台でもありました。

    ☆☆★★●●

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    2010/07/09 12:23

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