晴耕雨読 公演情報 SPIRAL MOON「晴耕雨読」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    緻密で繊細な珠玉作、お薦め。
    言葉通りの<晴耕雨読>の さらに奥を描いており、ラストシーンは何とも切ない。
    雨の日に 男が書いた小説を女が読む、その内容を三篇のオムニバスとして描き、公演全体の世界観を立ち上げる。その舞台美術はスタイリッシュ、そして 木のぬもり を感じさせるような優しさ。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手と下手を二分割したような作り。上手は白を基調にした室内で、テーブルとイス、二分割と思わせる壁にキャットウォークまたは階段のような。その壁外に1本の木。下手は素舞台だが、客席寄りの 別スペースを高くし欄干らしきものを設える。室内のテーブルやイス、下手に搬入されるベンチ等 全てが木製である。

    雨の日の朝、男と女のとりとめのない会話、そのうち男が書いた小説を読むという形で、短編が紡がれる。上手 室内にいる二人は常に舞台上におり、下手で演じられている光景は小説の中のこと。
    ●第一話「雨のピクニック」
    女が欄干から身を乗り出すような格好に、男は自殺か と勘違いする。それを切っ掛けに付き合いだすといったありふれた内容だ。同時に室内にいる男女の物語の始まりのよう。
    ●第二話「本と斧」
    夜、女の後ろを男がずっとついてくる。女が男に向かってストーカーを止めるように言うが、男は帰る方向が同じだと言い訳する。女は突然 斧を取り出し振り下ろす狂気。
    ●第三話「プロポーズ大作戦」(これだけは本ではなく原稿段階)
    BARカウンター、男が女に向かって結婚してほしいと指輪を差し出すが、自分は相応しくないと断わられる。そこへ彼女の元カレが現れ、三角関係のコミカルな騒動が始まる。

    それぞれ違うテイストの短編であるが、底には人の温かさと危うさ、そして狂気のようなものが透けて見える。室内にいる男と女が、自身を含め 何となく人の多面性を覗き見るよう描き方だ。その意味ではシェイクスピアの「万人の心を持つ」(ミリアド・マインデッド)の世界観を彷彿とさせる。

    室内の男と雨の日にだけ現れる女…そういえば、冒頭 女が もう起きたのと尋ねたあたりが伏線で、この男(作家)の夢幻の世界観の始まりだ。2人の会話に「かぐや姫」はいずれ何処か(月)へ帰るといった比喩もあり、女の正体は知れる。勿論、足元を見れば男と女は違い、その次元の相違(舞台美術 階段⇒天上)を表している。

    木の ぬくもり、照明による葉の影、ピアノの単音など、舞台技術が物語を優しく包み込むようで心地良い。その演出はSPIRAL MOON(秋葉舞滝子サン)らしい余韻を残す。見事!
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/11/12 23:14

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