君は即ち春を吸ひこんだのだ 公演情報 新国立劇場演劇研修所「君は即ち春を吸ひこんだのだ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    新美南吉の短い青年期を描いた伝記劇。先に金田一京助の伝記劇を見たが、最近、戦前の危うさが泡立ってくるような時期を生きた人々がよく取り上げられる。同盟通信はその歴史的証明か。日々、周囲を見れば、いやな時代だなぁとメディアに接するたびに気が萎えるいまの時代である。人々にはやはり動物的予感があるのかも知れない。
    この原田ゆうの作品は旧作で、新国立の研修所の卒業公演に選ばれた。こんな難しいものをやらなくても良いのに。
    先の金田一の本のような凡なわかり良さがない、というより、わかりやすくなるところを本が避けている。演出も避けている。宮沢賢治の場合は作品に謎めいたところが多いが、この本の場合は、南吉そのものが日常の家族にも社会からも浮いてしまう謎を描いている。戦前の地域社会が実に巧みに書かれているのだが、これを今の人々が表現するのは難しい。地域社会にすり込まれた土霊のようなものに取り込まれていく南吉の姿は隔靴掻痒である。今もこれに似た実態もなくはないだろうが、なんだか女子マンガの理解でも良いか!となっているシーンもある。これはこれで研修生は皆よくやったと思うが、タイトルに合わせて細かく作り込んだセットの庭と、押さえ込んだ音楽が一番の出来というのでは卒業公演としてはどうだろうか。
    やはりこの作品は、もっと上級者の本だと思う。タイトルに背き、ゾッとするような上演が見たいともった。

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    2023/11/11 22:59

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